リミット



「もう帰る?」


腕時計を私に見せながら先輩は尋ねる。


「はい、帰ります」

「じゃあ行こっか」


そう言って先輩は立ち上がる。

私もつられて立ち上がった。


(今の言い方、一緒に帰るみたいな口調だけど…え?)


いやいや、そんなわけないよね。

出口まで一緒に行こうって意味だ。

ノートやペンケースをカバンに入れて、待っていてくれた優先輩の隣に並んだ。

こんな風に話しながら歩いてると、付き合ってるように見えるのかな。


(見えるといいな、なんてね)


抱いた願いはその手に触れたい衝動に変わって、優先輩の顔を見上げれば胸が切なく締め付けられた。