学年は違うし、接点は資料室しかなくて接点とは言えないし、仕方ないのだけれど。

あと1年早く生まれてたら…なんて非現実的な願いに思わず自分でため息をついた。


ふと、突然に肩をぽんぽんとされる。

振り向けば思いがけないその人に驚いた。


「優せんぱっ……」

「しーっ、ここ図書館だから」


優先輩は人差し指を口に当て、慌てた様子で私をなだめる。


「な…なんでここに?」

「この図書館、あんまり同じ学校の人いないからよく来るんだ」


勉強は一人でしたほうがはかどるから、と先輩は笑う。

え、じゃあ私は邪魔になるのでは…。


「一人二人いるくらいなら全然いいけどね」


そう言って優先輩はまた笑う。


大丈夫だろうか、と不安に思いながら優先輩の顔を見上げた。


「和子ちゃんも勉強?がんばってるね」


先輩は隣に座りながら私の手元を覗き込む。


(え、隣に座るの?!)


焦って周りを見渡すと、他校の生徒や大人で席が埋まっている。

優先輩は他に席がないからここに座っただけだ。


(それだけだからドキドキするな私!)


「和子ちゃん?」

「私は赤点がかかっているので勉強しないと大変なんです…」

「え、そんなに悪いの?」

「数学が……」

「俺、教えようか?」


そう言いながら、優先輩は私の問題集を手に取って問題に目を通し始める。


「えっ」


会えただけでも嬉しいのに…。


(これは期待してしまっても仕方ないよ…)