リミット



資料室がある4階に上がってみても、誰にも会わなかった。

いつものように人の気配がない静かな場所だ。

少し残念がっている自分がいて、やっぱり先輩が好きだと実感する。

でも、これでいいんだ。

好きだけど諦める。

だから、もう会わないのが1番いい。


***


「放課後にまた戻しといてくれ」


授業が終わり、資料を示して教師は言った。


「はい」


資料を抱えて階段を上る。

先輩と出会った時と同じ状況だと、胸が勝手に期待を抱いて高鳴る。


同じ状況でまた出会えたら…なんて。


出会えたらなんだって言うんだ。

都合のいい思考を振り払って、資料を机から腕に抱えた。