優先輩の気遣うような、不安そうな声色が耳に届く。
手の温もりが触れた所から広がる。
その優しさが顔を見なくても伝わってくる。
(なんで、そんなに優しいんですか)
優しくしないでほしい。
期待してしまうから。
先輩に優しくされると胸が締めつけられるように痛いから。
「和子ちゃ…」
「大丈夫です!すみません、ちょっと疲れちゃったみたいで」
顔を上げて精一杯の笑顔を作った。
「……」
優先輩の切れ長な目がじっと見つめる。
そして、ふっと柔らかく笑った。
「引き止めてごめんね、ゆっくり休んで。今日はお疲れ様」
その笑顔に、その優しい声に、涙が出そうになる。
胸が痛いほど締めつけられる。
私は勢いよく頭を下げて、顔を見られないように小走りで部室に向かった。


