〜和子side〜


「暑い…」


午前中だけの練習試合が終わり、相手校との挨拶を終えた私達は片付けを始める。


「和子おつかれー」

「お疲れ様です」


ポンと私の肩を叩いたのは部長だった。


「調子いいね」


「本当ですか?ありがとうございます」


「その調子で頑張ってね、期待の1年! …ん?」


ふいに何かを見つけたように、部長が目線を私の奥へと向けて首をひねった。


「どうしたんですか?」

「いや、あそこにいるの私のクラスメイトなんだけど…なんでバレー部なんて見に来てるのかな?」


部長が指を向けた方向に目を向ける。


「優先輩!」


来てくれていたんだ、と優先輩の姿を見つけて思わず名前を呼ぶ。

こちらに気づいた優先輩は手を振ってくれた。


「和子が呼んだの?」

「呼んだっていうより…なりゆきですかね」

「意外なところで共通の知り合い…あいつのコミュニティは広くないと思ってたわ」

「かっこいいですよね」


私はでれでれと顔を緩めながら優先輩に手を振り返す。


「そう?私は別に普通かなあ。あ、そういえば、あいつ彼女いるよね」


(……え?)


私の動きはぴたっと止まった。


「え、もしかして知らなかった?ごめん!」


部長が慌てて謝る。

私はとっさに部長のフォローをしようと笑顔をつくる。


「いえ、知ってましたよ! かっこいいって言っても芸能人とかに対する感じです」


「あぁ…そっか、よかった」


部長はほっと胸を撫で下ろした。


(彼女、いたんだ…)


驚きとかショックじゃなくて、あぁそうなんだ、とぼんやりと思った。