コートで展開される試合に目を向ける。

ぼんやりと試合の流れを眺めていると、見覚えのある同学年の女子を見つける。


(女バレの部長だっけ。あれは強い方のチームだな…)


「レフト!」


相手校のチームの1人が叫ぶように言った。


「…あ」


トスでボールが上がり、ボールに合わせて飛んだ女の子が相手のコートにそれを鋭く打ち落とす。

あの子だった。

あの背の小さい、資料室で会った和子ちゃん。


「和子ナイスー!」


選手たちはコートの真ん中で円を作って肩を組む。

その中で1人小さいあの子が今、ジャンプしたんだ。


(なんなんだ、あのジャンプ力…)


他の選手と変わらない高さまで飛んだその子に、思わず目が釘付けになる。




すごい。

頭の中にはその言葉しか出てこない。

何度も何度も、高くジャンプするたびに小さく結んだ彼女の髪が揺れる。

点を決めたときの笑顔。

相手に点を決められたときの、チームメイトと動きを確認する真剣な表情。

小さくて、最初のイメージ…階段で転んでいたイメージだった後輩なのに。

和子ちゃんの姿と表情が記憶に残った。