パチン パチン
ホチキスの音が続く。
かすかに聞こえてくるのは優先輩の衣擦れの音だ。
「…先輩は何部ですか」
沈黙を破る自分の声はかたくて、つっけんどんな口調になってしまう。
先輩は笑いをこらえてる様子で優しい瞳を私に向ける。
「俺は部活入ってないんだ」
「え、そうなんですか?」
「中学まではバスケ部だったんだけどね」
「続けなかったんですか?怪我とか?」
思わず声が暗くなった。
先輩は首を横に振ってすぐにそれを否定する。
「ちがうちがう。もうスポーツはいいかな、って思ちゃったんだ」
「よかった…」
ほっと息をつくと同時に、そうか、と思った。
私がバレーに飽きることはないと思うけれど、優先輩は違うのだろうか。
優先輩の言う「もういいかな」が理解できなくて、受け入れられないことがなんだか寂しい。


