優先輩の受験が無事に終わった、ということで春休み。
先輩からのお誘いがきた。
〈行きたい場所、考えておいてね〉
というメールに、私は頭を悩ませた。
先輩とだったら、どこでもいいんだよね…。
なんて考えて、そんなこんなしているうちに約束の日。
待ち合わせた駅前の時計台に座り、どうしようかと未だに考えを巡らせていた。
「和子ちゃん、お待たせ。久しぶりだね」
ずいぶんと聞いていなかった、でも聞き間違えるはずのない、優先輩の声。
行くところを考えるのに頭がいっぱいになってたけど、そういえば会うのは久しぶりだった。
「お久しぶりです…」
顔が熱い。なんでか、優先輩を直視できない。
「顔、赤いね。大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
優先輩が私の隣に座る。
「どっか行きたいところあった?」
触れる肩にもっと顔が熱くなって、私は首を横に振るしかできなかった。


