***
結局、待ち合わせた駅から電車に乗って隣町でぶらぶらと過ごした。
「先輩!海ですよ!海!」
すでに夕方。オレンジに染まる海と空を眺めてはしゃぐ私。
「うん、海だねー」
「海なんて何年ぶりに見たかな…」
「え、そんなに?」
「家の近くに海なんてないですから」
少しむくれる私に、優先輩は笑う。
私は、靴を脱いで波際まで行く。
「冷たい!気持ちいいですよ」
昼の暑さが残る、生暖かい風が吹き抜ける。
先輩はまた、優しく笑っている。
あぁ、もうだから、その表情はずるいです。
たまらなく優先輩が愛おしくなって、私を見つめる先輩のもとに駆けた。


