リミット



部屋の中に入って机に資料を置くと、なぜか優先輩が隣に立っていた。

(え、なんで)


優先輩が部屋の中まで入ってくるとは思っていなかったから、思わずその顔を見つめてしまう。


「どうかした?」

「何もないです!」


落ち着け。焦るな。

自分に言い聞かせる一方で鼓動はどんどん速くなっていく。

だって準備室には2人しかいないし校舎の4階なんてほとんど人が通らないし、ドキドキするのは仕方ないよね!?


「和子ちゃん。今から時間ある?」


(…え)


「あります!」


これはもしかして…なんて都合のいい期待が胸に膨らんでいく。

ドキドキのうるさい心臓の音を聞きながら、優先輩の口が動くのを見つめた。


「よかったら手伝ってくれない?俺も雑用頼まれちゃってさ」


…ですよね。

どっか行かない?みたいなお誘いを期待したのは私の勝手な妄想だ。

期待して思わず元気に返事をしてしまった自分が恥ずかしい。


「和子ちゃん?」

「はい!大丈夫です、手伝います!」


それでも先輩と一緒にいられて話せることには変わりない。

それに、私が優先輩の力になれる。

こんな機会、もう次なんてないかもしれないから逃すわけにはいかない。