小5の冬。
私の母は一生の眠りについた。
「紅花!」
紅花とは私のこと松坂紅花(まつざかくれか)高校2年。
そしてこの声の主は赤谷紫苑。
中2からの付き合いで別に付き合ってるわけではないけど仲良くしてくれた。
私は母親のことを忘れたわけではない。
何度も泣いた。何度も心が奪われてた。
今でもあの暖かい腕でおかえりって抱きしめて欲しい。
あの声で名前を呼んでほしい。
あぁ、もしいるならばその手で私のナミダをぬぐってほしい…

「紅花!」
紫苑は私のナミダをぬぐった、
「大丈夫か?」
紫苑は私の事情を知ってる。
だから、いつもそばにいてくれる。
頭いいくせに高校だって私にあわせてくれた。

「うぅ…紫苑…。紫苑は死なない?」
「死なないよ。絶対」
「うん」

小さいときに兄をなくし、母親をなくした私は死に不安を抱いているのだ。