「カナ、誕生日とかどうでもいいって感じだな」


玲斗のその言葉は確かに図星だ。
正直自分の誕生日は基本的にどうでもいい。


「まあまあ、そんな顔しないでさ。カナデ、誕生日おめでとう」


リョーはそう言いながら机の上に白い紙袋を置いた。


「ボクからも!カナデ、誕生日おめでとう」


瀬那はリョーに続いてそう言い、黒い箱を置いた。


「奏ちゃ~ん、HAPPY BIRTHDAY~」


ウィンクとやたらいい発音でそう言ったナルは白と黒のツートンカラーのラッピング袋を置いた。


「カナ、誕生日おめでとうな!」


ニカッと笑い灰色と黒のストライプの袋を置いた玲斗。


「libertyからなら祝われても嬉しいよ。ありがとう」


素直にそう伝えると、4人は嬉しそうに笑顔になった。
喜んでいるのは俺なはずなのに、本当に嬉しそうに笑う4人。
何だか、そんなに喜ばれると照れくさくなり、顔を見られないようプレゼントへ目を向けた。




放課後、今日は久しぶりに陸上部へ遊びに行こうとグラウンドへ向かった。


「長坂先輩お久しぶりっす!」


「ちわーっす!」


「先輩っハードルしましょうよ」


ハードル走者の1年が俺の姿を見るとそう声をかけてきた。


「ありがとう。それから悪いけど、ハードルはしないよ、俺は高跳びやってくるね」


お礼と断りを入れ高跳びをしている場所へ向かった。


「あっ!長坂先輩!」


「最近来てくださらなかったんでもう来ないのかと心配しましたよ!」


1人が俺を見つけると周りにいたやつ達は一斉に振り返り口々にしゃべりだした。


「俺は部員じゃないんだから毎日は来ないんだよ」


「それなら正式に部員になれよ長坂」


「それは嫌だね」


そう伝えると口を尖らせ不満を言う部員達。
俺はそんなことにお構いなしで高跳びの助走距離を測った。


「長坂」


聞こえたその声に部員達は嬉しそうに声の主の名前を呼んだ。


「ハル君、お邪魔してます」


「あぁ、構わない。今日も高跳びか……」


スッと目を細めて高跳びのバーを見つめるハル君。
それを気にせず軽くジャンプして準備をする俺。
そして助走距離から走ってバーの上を跳ぼうとした。


「長坂!」


その瞬間ハル君に名前を呼ばれたがもう跳ぶしかない場所に来ていたからそのまま地面を蹴った。


「誕生日おめでとう!」


「は!?あっヤバい!」


気付いた時にはもう遅く、俺は思いっきりバーを落とした。


「ハル君が急にそんなこと言うから落としちゃったじゃん」


「わざとじゃないぞ?今思い出したから言っただけだ」


「ウソ付き」


わざと言ったくせにしらばっくれるハル君。
まったく……ここぞとばかりにニヤニヤ笑ったりしてさ。