「こんなにたくさんの本重たいでしょ?」


「あっ……」


あの時の人だ!

このサラサラそうな黒いストレートの髪と、左手首に付けられたバングル。
あの時後ろから見えたものが今はすぐ近くで見えた。


「えっと??……」


驚いてずっと顔を見てしまっていた私へ戸惑ったように笑った目の前の先輩。


「あっ、ごめんなさい!」


見すぎた私は恥ずかしくなり目線を床へ移した。
すると、手の中にあった大量の本は消えた。それにもう一度目線を上げると私の手の中にあった本は先輩の手の中へあった。


「ぼくが運ぶから、片付けるのを手伝ってもらってもいいかな??」


さっきの戸惑ったような笑顔とは違い、今度は優しい笑顔で私を見てそう言った。

そして私と先輩は全ての本を片付け終わり、椅子へ向かった。


「ありがとうございました」


「いや、ぼくの方こそ手伝ってもらってありがとう」


私へさっきと同じように笑顔を向けた先輩。


「ぼくは2年4組の荒川涼桔。君は??」


「私は1年4組の小早川詩音です」


お互いによろしくお願いしますとお辞儀をし、目が合うとクスッと笑った。


「小早川さんよく図書室にいるね」


突然のその質問に一瞬反応が遅れた私。
でも先輩は私がどうして知っているのか不思議そうにしていたことに気付いたのか、またクスッと笑った。


「1年生が図書室にいるのは珍しいからね」


「私、本が好きなんです。この霧南を受験しようと思った理由の1つもここの図書室なんです。オープンスクールの時、広くてたくさんの種類があるここを見て、毎日来たいと思ったんです」


私がそう言うと、荒川先輩は一緒だと言った。


「一緒??」


「ぼくもね、ここの図書室へ来たいと思ったのが理由の1つなんだよ。あとは、大切な友達がここへ来たからかな」


「部活が同じだった人とかですか??」


私の質問にうーん…と考えた素振りを見せた先輩。


「今は掛け持ちしている部活の方では一緒だけど、中学のときは部活違ったし、今も主にしている方の部活は違うよ」


「私にも部活は違うけど中学生の時からずっと仲良くしている友達がいます」


「そっか。ぼくも君と同じ感じだ」


初めて話したのに、とても話しやすく、とても優しい先輩。
もっといろんなことを聞きたいと思った私は、普段なら初対面の人にそんなに積極的に行かないにも関わらず、自分から質問をしていた。


「先輩は中学生のときは何部に??」


「ぼくは空手部だよ。ちなみに今も空手部に所属しています」


「それじゃあ、主にしている部活が空手ということですか??」


「そうだよ。掛け持ちしている部活は通称liberty」


「リバティ??」