「ねぇ~、今日さりょうの家行っていい~??」


「ずっり!!俺も行きたい!!」


libertyの部室で本を読んでいると突然ナルがぼくに向かってそう言った。
それを聞いたレイも体ごとぼくの方へ向けた。


「それなら俺も行きたい、瀬那はまあ家に帰りなよ」


「えっちょっ、ボクも行くからなっ!?」


セナをイジリながらナル達の話に賛成したカナデ。
イジラレながらも話に乗っかるセナ。


思えばぼくの家に上げたことがある友達ってこの4人しかいない。
だって、ぼくのことをちゃんとわかってくれたのがこの4人だけだったから………。





あれはぼくが小学生の時……。


「ねえねえ、涼桔君の家ってどんなの??」


「どんなのって??」


クラスメート数人に囲まれて突然そう聞かれたぼくは意味が全くわからなかった。
すると1人の子が気まずそうに口を開いた。


「お母さんがね……涼桔君のお家は恐いから近寄っちゃダメよって……」


「えっ??」


まだ幼かったぼくは家の事情とかよくわからなくて、本当にただ意味がわからなかった。
だから、そんなぼくにクラスメートは「違うんだね」と言って普通に接してくれていた。

変わったのは高学年になるにつれてだった。


「涼桔君の家ってヤクザなんだって……」


「恐~いっ!」


「あんなに大人しそうに見えるけどキレたらヤバそうだよね……」


周りから聞こえるヒソヒソ声。
いじめに発展しなかったのは、恐がられていたから。


「りょう~」


それでも唯一話しかけてくれていたのは、幼稚園の頃からずっと一緒のナル。
ナルだけはぼくの家に来て家の事情を知っていても避けたりしないでいてくれた。
だからぼくは、別にいいと思っていた。


この頃は。




「荒川涼桔です、よろしくお願いします」


季節は巡りぼく達は中学生になった。
ぼくは2組でナルは1組。
今までぼくの支えになってくれていたナルと離れてぼくは不安だった。


「うっそ……荒川君の家ってヤクザなの??……」


「顔はタイプだけどヤクザわねー……」


「荒川マジこえー……」


「関わんないようにしとこうぜ………」


同じ小学校出身の子がいるからそのうち知れ渡ることは何となくわかっていた。
だけど、入学早々にこんなに学校中に知れ渡ることになるとは思っていなかった……。


「いや、本当にノリ合わないんだよね~、なんか気張りすぎてるし~、女の子にも冷たいし~、あれはもう大魔王だよ!」


「アハハッ、社交的なナルが長坂君とそんなに仲が悪いとはね」


ナルはいつも休み時間が来る度にぼくの教室へ来てくれていた。
だからぼくは、ナルが来てくれるその瞬間だけは息がちゃんと出来ている気がしていた。


だけど、やっぱりクラスが違うから、授業中とかは嫌なことが多い。


「それじゃあペアを作ってくださいね」


その一言は大嫌いだった。
みんなぼくを恐がって近寄ってもくれなかった。


「(もう嫌だ……帰りたい……)」


俯いて下を見ることしか出来なかった。