結果を聞いた。
誰1人として全国大会へ進むことは叶わなかったと。
「俺にこんな情報教えてどうしたいっていうの」
廊下を歩いているところを前川先生に呼び止められて1枚の紙を渡された。
意味の分からない俺に対して、そんなこと気にした様子もなく去って行った。
とりあえず紙を開いてみると、そこには陸上部の総体の結果があった。
「本当に意味分からない」
早く捨ててしまおうとゴミ箱を探していると、角を曲がったときに誰かにぶつかりそうになった。
「おっと、ごめんなさい」
咄嗟に後ろに下がりぶつかるのは阻止出来た俺はその人に謝罪をした。
「あっ、長坂先輩!」
「瑠美ちゃん」
それはラッピング袋を持った瑠美ちゃんだった。
「すみません、注意してなくて……」
申し訳なさそうに謝った瑠美ちゃんに俺は笑って首を振った。
「どこかに向かってたの??」
「長坂先輩を探していました、今日作ったのはゼリーです」
「ありがとう、すごく美味しそう」
「長坂??……」
瑠美ちゃんと話していると突然後ろから聞こえた声に俺は固まってしまった。
だってその声は……。
「ハル君……」
総体から帰ってきたばかりのハル君はジャージ姿。
「長坂、お前初日見に来ていたんだな」
「まあいろいろあってね」
「走るものは全部見たのか??」
「いや、3000mをハル君のだけ」
俺へしっかり目を向けるハル君。
だけど俺はその目に自分の目を合わせることができなかった。
「新しい部長はまだ決まってないの??」
「あぁ、うちの陸上部は冬の大会の練習が本格的に始まる秋に決めるんだ。それまでは誰にも頼らず自分達で頑張れと前川先生に言われた」
「そっか」
なかなか続いていかない会話。
俺もハル君も、お互い多くしゃべる方ではないからね。
それに、この前総体見に行ってしまったから少し気まずい……。
いつもならもうちょっとちゃんと話せるのに……。
「3年の先輩方はもうじき部を離れる。だから今までより来やすくなると思う、また遊びに来い」
「ハハッ、ありがとう」
「あぁ……俺はいつでも長坂を待っている」
「……」
その“待っている”に答えることは出来なくて、俺は黙ってしまった。
「冬の大会では必ず全国大会へ行く。そして来年、最後の総体で必ず全国大会へ行き優勝する。そのために俺は走る」
「うん……」
「……俺は、長距離しか走れない」
「ハル君」
「それじゃあまたな」
俺の言葉を遮って横をスッと通り過ぎて行くハル君。
「長坂先輩、あの人と何かあったんですか??……」
聞いていいのか迷っているようにたどたどしくそう聞かれた。
「いや……ハル君とは何もないよ」
「それってどういう……」
「瑠美ちゃん」
「!!」
ハル君“とは”。
その言葉に反応してどういう意味かを聞こうとしていた瑠美ちゃんに笑顔を向けた。
今はまだ聞かないでほしいという意味も込めて。
「(長距離しか走れない……か)」
もう1度紙を開いて確認する。
「(やっぱり……これだよね)」
男子4×100リレー。
短距離走者の中で最も速い4人が選抜されるもの。
なのに長距離走者であるハル君の名前。
理由は分かっている。
短距離走者で速いやつが少ないからだ。
顧問は棒高跳び専門で走る競技は全くらしい。
だから教える人がいないんだ。
あまり結果を残せていない霧南陸上部は外部コーチも呼べないみたいだし。
唯一去年から発展したのはハル君のおかげで成績が残せている長距離走だけ。
今回だってハル君が県4位だったおかげで長距離走は注目されている。
「(なんて……俺には関係ないんだけどね)」
近くにゴミ箱を見つけて4つ折りにした紙を捨てる。
「瑠美ちゃん、外のベンチで一緒に食べようよ」
コクリと頷いて俺のそばに駆け寄ってきたのを確認して歩き出す。
ゴミ箱に目を向けたりすることなく。
誰1人として全国大会へ進むことは叶わなかったと。
「俺にこんな情報教えてどうしたいっていうの」
廊下を歩いているところを前川先生に呼び止められて1枚の紙を渡された。
意味の分からない俺に対して、そんなこと気にした様子もなく去って行った。
とりあえず紙を開いてみると、そこには陸上部の総体の結果があった。
「本当に意味分からない」
早く捨ててしまおうとゴミ箱を探していると、角を曲がったときに誰かにぶつかりそうになった。
「おっと、ごめんなさい」
咄嗟に後ろに下がりぶつかるのは阻止出来た俺はその人に謝罪をした。
「あっ、長坂先輩!」
「瑠美ちゃん」
それはラッピング袋を持った瑠美ちゃんだった。
「すみません、注意してなくて……」
申し訳なさそうに謝った瑠美ちゃんに俺は笑って首を振った。
「どこかに向かってたの??」
「長坂先輩を探していました、今日作ったのはゼリーです」
「ありがとう、すごく美味しそう」
「長坂??……」
瑠美ちゃんと話していると突然後ろから聞こえた声に俺は固まってしまった。
だってその声は……。
「ハル君……」
総体から帰ってきたばかりのハル君はジャージ姿。
「長坂、お前初日見に来ていたんだな」
「まあいろいろあってね」
「走るものは全部見たのか??」
「いや、3000mをハル君のだけ」
俺へしっかり目を向けるハル君。
だけど俺はその目に自分の目を合わせることができなかった。
「新しい部長はまだ決まってないの??」
「あぁ、うちの陸上部は冬の大会の練習が本格的に始まる秋に決めるんだ。それまでは誰にも頼らず自分達で頑張れと前川先生に言われた」
「そっか」
なかなか続いていかない会話。
俺もハル君も、お互い多くしゃべる方ではないからね。
それに、この前総体見に行ってしまったから少し気まずい……。
いつもならもうちょっとちゃんと話せるのに……。
「3年の先輩方はもうじき部を離れる。だから今までより来やすくなると思う、また遊びに来い」
「ハハッ、ありがとう」
「あぁ……俺はいつでも長坂を待っている」
「……」
その“待っている”に答えることは出来なくて、俺は黙ってしまった。
「冬の大会では必ず全国大会へ行く。そして来年、最後の総体で必ず全国大会へ行き優勝する。そのために俺は走る」
「うん……」
「……俺は、長距離しか走れない」
「ハル君」
「それじゃあまたな」
俺の言葉を遮って横をスッと通り過ぎて行くハル君。
「長坂先輩、あの人と何かあったんですか??……」
聞いていいのか迷っているようにたどたどしくそう聞かれた。
「いや……ハル君とは何もないよ」
「それってどういう……」
「瑠美ちゃん」
「!!」
ハル君“とは”。
その言葉に反応してどういう意味かを聞こうとしていた瑠美ちゃんに笑顔を向けた。
今はまだ聞かないでほしいという意味も込めて。
「(長距離しか走れない……か)」
もう1度紙を開いて確認する。
「(やっぱり……これだよね)」
男子4×100リレー。
短距離走者の中で最も速い4人が選抜されるもの。
なのに長距離走者であるハル君の名前。
理由は分かっている。
短距離走者で速いやつが少ないからだ。
顧問は棒高跳び専門で走る競技は全くらしい。
だから教える人がいないんだ。
あまり結果を残せていない霧南陸上部は外部コーチも呼べないみたいだし。
唯一去年から発展したのはハル君のおかげで成績が残せている長距離走だけ。
今回だってハル君が県4位だったおかげで長距離走は注目されている。
「(なんて……俺には関係ないんだけどね)」
近くにゴミ箱を見つけて4つ折りにした紙を捨てる。
「瑠美ちゃん、外のベンチで一緒に食べようよ」
コクリと頷いて俺のそばに駆け寄ってきたのを確認して歩き出す。
ゴミ箱に目を向けたりすることなく。