「来年こそは……」
そう呟いてバウンドさせていたボールをゴールへシュートする。
「おわっ!!」
まさかのミス……。
「俺、調子悪すぎな」
苦笑いをしつつ床で無惨にも弾むボールを拾いに行く。
転がって行くボールに手を伸ばしかけた瞬間、誰かの足にボールが当たり、そっと拾い上げられた。
誰だろうと顔を上げると、そこにはジャージ姿の伊吹。
「伊吹……まだ帰ってなかったんだな」
「岡本先輩も……」
そう言ってゆっくりと大きな弧を描きながら返されたボール。
「元気ねーな」
そう言うとハッとした顔で俺を見た。
「3年のマネの先輩、泣いてたからか??」
俺の言ったことはどうやら当たりらしく、伊吹はまた大きく目を見開いた。
「……先輩達は後輩の前では決して泣いていませんでした、笑顔でこれから頑張れと言ってくれました」
「……」
そうだ、3年の先輩はみんな俺達の前で泣かなかった。
それは選手もマネも。
『ごめんな……全国連れて行ってやれなくてっ』
『そんなことっ!!…私達ももっとサポート出来たはずなのにっ』
部室の前を通ると偶然中から聞こえた会話。
伊吹も多分これを聞いていたんだ。
「……胸が痛かったです……」
「……」
シンッと静まる俺達の空気。
俺も伊吹も、あの会話を思い出していた。
「何だ、お前達か」
突然聞こえた足音に振り返ると、そこには日向さんの姿が。
今の今まで話していた内容が内容で、俺達は日向さんと言葉を交わすのが躊躇われた。
「ぷっ、ひっでー顔」
そう言った瞬間、俺の手の中にあったボールは日向さんによってゴールへシュートされた。
「岡本、お前次松岡と一緒に副キャプテンだからな」
「えっ??」
シュートの瞬間俺より前へ出た日向さん。
振り返ることなく、日向さんにそう言われた言葉。
俺は意味不明といった素っ頓狂な声を出した。
「お前達の代、期待してるからな」
勝手に話を進めていく日向さんに付いて行けていない俺。
「伊吹は今まで通り優しくみんなを支えてくれな??」
「はっはい!!」
突然話を振られた伊吹も焦りながらそう答えた。
「それじゃあ俺帰るな、お疲れ」
背を向けて帰ろうとする日向さん。
俺は咄嗟に日向さんの背に声をかけた。
「日向さんはっ、涙とか無縁の人なんスか!?」
なぜ3年全員が泣いたあの部室で唯一泣かなかったのか、それを聞きたかっただけなのに、咄嗟すぎて聞き方がマズい。
これじゃあまるで薄情な人と言ってるみたいだ……。
「……お前達が全国行ったときにしか泣かないって決めたからな」
「!!」
振り返ってニッと笑ったその顔は、すごく清々しい顔をしていて、後悔が見られない。
「ありがとうございましたっ!!」
遠くなっていく背にそう叫べば、振り返りもせず体育館から出て行った。
「来年こそは……」
「えっ??」
俺の呟きにそう聞き返した伊吹。
「伊吹、来年は全国行く。そんで、日向さんの泣いてる姿見てやる」
「はいっ!」
笑顔を向ければ、返ってきたのはいつもの笑顔。
俺はそれに頷いて日向さんがゴールしたボールをシュートした。
来年の思いも込められたボールは、ネットをくぐり床で大きく弾んだ。
そう呟いてバウンドさせていたボールをゴールへシュートする。
「おわっ!!」
まさかのミス……。
「俺、調子悪すぎな」
苦笑いをしつつ床で無惨にも弾むボールを拾いに行く。
転がって行くボールに手を伸ばしかけた瞬間、誰かの足にボールが当たり、そっと拾い上げられた。
誰だろうと顔を上げると、そこにはジャージ姿の伊吹。
「伊吹……まだ帰ってなかったんだな」
「岡本先輩も……」
そう言ってゆっくりと大きな弧を描きながら返されたボール。
「元気ねーな」
そう言うとハッとした顔で俺を見た。
「3年のマネの先輩、泣いてたからか??」
俺の言ったことはどうやら当たりらしく、伊吹はまた大きく目を見開いた。
「……先輩達は後輩の前では決して泣いていませんでした、笑顔でこれから頑張れと言ってくれました」
「……」
そうだ、3年の先輩はみんな俺達の前で泣かなかった。
それは選手もマネも。
『ごめんな……全国連れて行ってやれなくてっ』
『そんなことっ!!…私達ももっとサポート出来たはずなのにっ』
部室の前を通ると偶然中から聞こえた会話。
伊吹も多分これを聞いていたんだ。
「……胸が痛かったです……」
「……」
シンッと静まる俺達の空気。
俺も伊吹も、あの会話を思い出していた。
「何だ、お前達か」
突然聞こえた足音に振り返ると、そこには日向さんの姿が。
今の今まで話していた内容が内容で、俺達は日向さんと言葉を交わすのが躊躇われた。
「ぷっ、ひっでー顔」
そう言った瞬間、俺の手の中にあったボールは日向さんによってゴールへシュートされた。
「岡本、お前次松岡と一緒に副キャプテンだからな」
「えっ??」
シュートの瞬間俺より前へ出た日向さん。
振り返ることなく、日向さんにそう言われた言葉。
俺は意味不明といった素っ頓狂な声を出した。
「お前達の代、期待してるからな」
勝手に話を進めていく日向さんに付いて行けていない俺。
「伊吹は今まで通り優しくみんなを支えてくれな??」
「はっはい!!」
突然話を振られた伊吹も焦りながらそう答えた。
「それじゃあ俺帰るな、お疲れ」
背を向けて帰ろうとする日向さん。
俺は咄嗟に日向さんの背に声をかけた。
「日向さんはっ、涙とか無縁の人なんスか!?」
なぜ3年全員が泣いたあの部室で唯一泣かなかったのか、それを聞きたかっただけなのに、咄嗟すぎて聞き方がマズい。
これじゃあまるで薄情な人と言ってるみたいだ……。
「……お前達が全国行ったときにしか泣かないって決めたからな」
「!!」
振り返ってニッと笑ったその顔は、すごく清々しい顔をしていて、後悔が見られない。
「ありがとうございましたっ!!」
遠くなっていく背にそう叫べば、振り返りもせず体育館から出て行った。
「来年こそは……」
「えっ??」
俺の呟きにそう聞き返した伊吹。
「伊吹、来年は全国行く。そんで、日向さんの泣いてる姿見てやる」
「はいっ!」
笑顔を向ければ、返ってきたのはいつもの笑顔。
俺はそれに頷いて日向さんがゴールしたボールをシュートした。
来年の思いも込められたボールは、ネットをくぐり床で大きく弾んだ。