「ファイットーー!!」
「走れーーっ!!」
あぁ……、何で俺はここにいるんだろう……。
自分の考えが全く理解出来ない。
今日は多くの部活が総体のため、授業が早く終わる日。
libertyの部室でいる予定だったのに、瀬那が美術室へ行ってヒマになったからもう家に帰ろうと思い電車に乗った。
なのに、気付いたら俺は2駅先まで乗ってしまい、もうこの際このあたりでヒマを潰そうとフラフラ歩いていると、前を歩いていた集団の後をついて行ってしまった。
「それで気付いた時にはここって……」
最終的に俺がたどり着いたのは県内の陸上部が総体を行っているスタジアム。
「はぁー……もう帰ろう……」
「長坂??」
「えっ??……」
帰ろうと思い振り返ると、聞いたことのある声に名前を呼ばれた。
「やっぱり長坂だ!」
「前川……先生……」
声の主は霧南陸上部顧問で棒高跳び専門である前川珠侑(まえかわ しゅう)だった。
「陸上、見に来たのか??」
「いや…見に来たわけじゃないです、たまたま来てしまっただけです」
「そうか!」
この人とはあまり1対1で話したくない。
常に俺を陸上部へ入れたがっているから。
「それじゃあ、俺は帰ります」
「長坂、見て行ってくれないか??」
「はっ??…」
「もうすぐ3000m走だ」
帰ろうとする俺にすかさず言葉を重ねる前川先生。
「ハル君……ですか」
「あぁ、深春はいつになく本気でこの大会に挑んでいる」
ハル君とは俺と同じ2年の深春仁(みはる じん)。
霧南陸上部で長距離走者を努める部のエース。
本気でって、総体だから当然だろうって言ってやりたかったけど、話を膨らますのが嫌だから黙ってそれを聞き流した。
結局、ハル君が走るのだけ見て帰ることにした俺。
「ほら、深春走るぞ」
指差したのは第5レーン。
そこには短髪の黒髪が霧南の文字を背に佇んでいた。
そして、スタジアム全体に鳴り響いたピストルの音。
それと同時に走り出す選手達。
「霧南ファイットーー!!」
「深春ファイットーー!!」
遠くのベンチから聞こえるハル君を応援する声。
ハル君はどんどん他の選手達を抜いて行き、遂にトップを走り出した。
でもそれに終わらず、ハル君はどんどん前を走り、タイムを伸ばしていった。
そしてついに……。
「大会新記録です!過去最速の記録を大幅に塗り替えました!」
ゴールしたハル君のタイムは信じられないほど速く、大会の新記録を叩き出した。
「……俺帰りますね、お疲れ様でした」
「長坂、陸上部はいつでも歓迎だからな!」
そう言った前川先生の言葉を無視して今度こそ本当に帰ろうとした瞬間。
「!!」
ゴール地点で息を整えるハル君と目が合った。
ハル君は驚いたように目を大きく見開き、俺は驚きのあまり呆然と立ち尽くしてしまった。
「っ!!……」
俺はハッとして早足でスタジアムから出た。
「俺は何をやっているんだろう……はぁー……帰ろう……」
嫌みなくらい真っ青な空。
俺の呟きとため息はそんな空に吸い込まれて消えて行った。
「走れーーっ!!」
あぁ……、何で俺はここにいるんだろう……。
自分の考えが全く理解出来ない。
今日は多くの部活が総体のため、授業が早く終わる日。
libertyの部室でいる予定だったのに、瀬那が美術室へ行ってヒマになったからもう家に帰ろうと思い電車に乗った。
なのに、気付いたら俺は2駅先まで乗ってしまい、もうこの際このあたりでヒマを潰そうとフラフラ歩いていると、前を歩いていた集団の後をついて行ってしまった。
「それで気付いた時にはここって……」
最終的に俺がたどり着いたのは県内の陸上部が総体を行っているスタジアム。
「はぁー……もう帰ろう……」
「長坂??」
「えっ??……」
帰ろうと思い振り返ると、聞いたことのある声に名前を呼ばれた。
「やっぱり長坂だ!」
「前川……先生……」
声の主は霧南陸上部顧問で棒高跳び専門である前川珠侑(まえかわ しゅう)だった。
「陸上、見に来たのか??」
「いや…見に来たわけじゃないです、たまたま来てしまっただけです」
「そうか!」
この人とはあまり1対1で話したくない。
常に俺を陸上部へ入れたがっているから。
「それじゃあ、俺は帰ります」
「長坂、見て行ってくれないか??」
「はっ??…」
「もうすぐ3000m走だ」
帰ろうとする俺にすかさず言葉を重ねる前川先生。
「ハル君……ですか」
「あぁ、深春はいつになく本気でこの大会に挑んでいる」
ハル君とは俺と同じ2年の深春仁(みはる じん)。
霧南陸上部で長距離走者を努める部のエース。
本気でって、総体だから当然だろうって言ってやりたかったけど、話を膨らますのが嫌だから黙ってそれを聞き流した。
結局、ハル君が走るのだけ見て帰ることにした俺。
「ほら、深春走るぞ」
指差したのは第5レーン。
そこには短髪の黒髪が霧南の文字を背に佇んでいた。
そして、スタジアム全体に鳴り響いたピストルの音。
それと同時に走り出す選手達。
「霧南ファイットーー!!」
「深春ファイットーー!!」
遠くのベンチから聞こえるハル君を応援する声。
ハル君はどんどん他の選手達を抜いて行き、遂にトップを走り出した。
でもそれに終わらず、ハル君はどんどん前を走り、タイムを伸ばしていった。
そしてついに……。
「大会新記録です!過去最速の記録を大幅に塗り替えました!」
ゴールしたハル君のタイムは信じられないほど速く、大会の新記録を叩き出した。
「……俺帰りますね、お疲れ様でした」
「長坂、陸上部はいつでも歓迎だからな!」
そう言った前川先生の言葉を無視して今度こそ本当に帰ろうとした瞬間。
「!!」
ゴール地点で息を整えるハル君と目が合った。
ハル君は驚いたように目を大きく見開き、俺は驚きのあまり呆然と立ち尽くしてしまった。
「っ!!……」
俺はハッとして早足でスタジアムから出た。
「俺は何をやっているんだろう……はぁー……帰ろう……」
嫌みなくらい真っ青な空。
俺の呟きとため息はそんな空に吸い込まれて消えて行った。
