「ねぇ、写真見る??結構面白い写真いっぱいあるよ」


顔を見られたくなくてそう話を振るとまだ少し俯きがちでゆっくり頷いてくれた。


「こんな感じで1日目は終わってね。あー、これはナルに連れられてコスプレしたときのだ……」


「先輩の白衣とってもかっこよかったです。演技もすごくお上手でしたし」


そう言った瑠美ちゃんに違和感を覚えた。


「何で演技のことまで知ってるの??」


「えっと、蛍が松岡先輩に頼まれて私達に送ってくれたんです」


「やっぱりナルか。それね、若気の至りっていうやつだね、今更見ると恥ずかしいよ。普段、俺そういうのやらないからね」


苦笑いしながら写真を見ていると、瑠美ちゃんは俺の方へ目を向けた。


「はい、だからこそ貴重なものが見られて嬉しかったです。それに本当によくお似合いでした」


「ありがとう。でもやっぱり何だかんだみんなの方がカッコいいよね」


みんな恥ずかしがったりせず、本当に楽しんでいるな、と思いながら写真を見ていると、瑠美ちゃんが何かを呟いた。


「ん??何て??」


「……私は……長坂先輩が1番カッコいいと……思い……ます」


そう言い終えると、両手で顔を覆ってしまった。
でも、今はそれでいいんだ。
だって、俺もその言葉に顔を上げられない状態だから。


「(全くズルいよね……照れ屋なのにそういうの頑張って言ってくれるなんて……)」


その後もいろんな話をして時間は経っていき、俺は瑠美ちゃんを家に送って行った。


「今日は本当にありがとう、お菓子もストラップもありがとうね」


「こちらこそありがとうございました。たくさんお土産もありがとうございました」


お互いにお礼を言い合い、俺は手を振って自分の家へ帰って行った。


「やっぱり美味しいなぁ……」


家へ着き、自室で瑠美ちゃんからもらった抹茶のシフォンケーキを食べると、やっぱりこれが1番だと再度思った。


「あーあ……1人になると思い出しちゃうからダメだよなぁ」


自分にため息が出そうになりながら、その原因である物を机の引き出しからそっと取り出した。


《中吉:静かにあなた自身を慎んでいれば、朝日に雪が消えるように、いろいろな問題は消滅していきます。焦らず待ちましょう。

恋愛:慎重になりすぎないこと

待ち人:今の時期は来ない

願い:心配が多く。今は焦らずじっと待つことが大切》


「いろいろな問題は消滅していきます……か」


浅草寺で引いたおみくじ。
それは叶ってほしいと思うもの。
だけど、期待してはいけないもの。
信じてしまえば……期待してしまえば……きっと俺は傷付くことになるだろう。


「たかがおみくじだ……必ず起こるなんてありえない……期待なんて、するだけ俺が辛いだけだよ」


机の奥の奥に追いやって、その存在をなかったことにした。
そして抹茶のシフォンケーキの最後の一口を頬張り、頭を数回左右に振って、自身の思考を切り替えた。
まるで、何もなかったかのように。