「長坂先輩、おかえりなさい」


花柄のワンピースの上にレース生地のボレロを羽織り、ウェッジソールを履き、花の付いたカチューシャをした子が前方から駆けて来た。
俺はそれに手を振ってもたれかかっていた壁から背中を離した。


「ただいま、瑠美ちゃん」


そう言うと、少し恥ずかしそうにしながら笑ってくれた。


「さあ、行こうか」


「えっ!?でも、ここに集合って……」


「ハハッ、わざわざ呼んで、来てもらったのに、お土産渡してバイバイなんてしないよ。ほら、おいで」


呼ぶと驚きながら付いて来てくれた。
俺は最近出来たお茶の専門店へ瑠美ちゃんを連れて来た。
ここはテラスがあり、好きな茶葉を選んで飲むことができる。
俺はダージリンを、瑠美ちゃんはブルーベリーティーを注文し、それを受け取って外のテラスへ移った。


「はい、お土産」


「こんなにたくさんいただけません!」


アワアワとしながらそう言ってきたものだから、俺は笑いそうになった。


「いいからもらってよ。瑠美ちゃんがもらってくれないとそれ捨てなきゃいけなくなるからね」


「うっ……ありがとうございます」


俺の言葉に折れて、素直に笑顔でお礼を言ってくれた。


「いいえ。ねぇ、その袋の中にあるリボン付いてるやつ開けてみてよ」


「これですね。……わぁ!クッキーの型抜き!可愛い!」


「それならよかった」


イルカやネコとかの動物の型抜きや、クローバーや花の型抜きとかが入っていて、予想以上に喜んでくれたみたいでよかった。


「本当にありがとうございます!先輩、これは動物園のお土産です、それとこっちが頼まれていた抹茶のお菓子です」


小さな紙袋と英文字の書かれたランピング袋を手渡され、お礼を言ってから紙袋の方を開けてみた。


「ネコのストラップだね!すごく嬉しいよ、ありがとう」


早速ケータイに取り付けてみると、ケータイにぶら下がってゆっくり揺れているネコを見て瑠美ちゃんはふふっと笑った。


「喜んでもらえたようでよかったです。それにしても、抹茶のお菓子の方は突然どうしたんですか??」


その質問に俺は空中を見つめてから、黙っていてもしょうがないと思い白状することにした。


「和の専門店に行ったときにね、抹茶パフェを食べたんだ。本当においしかったんだけど、1番じゃないなって思ったんだよ」


「はい」


「1番はどこで食べたのかなって考えたらね、瑠美ちゃんのお菓子が1番だって思った。そう思ったらね、無性に食べたくなった」


目をこれでもかというほどに見開き、瞬きを数回した後、顔を真っ赤にして俯いてしまった。


「(あー……俺何言ってるんだろ……)」


真っ赤な顔を見て、自分がどれだけ恥ずかしいことを言ったのかを再認識して、頬が少し熱を持っていることに気付いた。