「お待たせしてすみません!」


図書館前に置いてあるベンチに座っていると、マキシ丈のワンピースの上に黒の七分のカーディガンを羽織り、ペタンコのサンダルを履き、ショートの髪には花の髪飾りを付けている女の子が駆け足でやって来た。


「全然大丈夫だよ。ほら、まだ10分前だよ」


腕時計を見せるとニコッと笑ってくれた。


「中に入ろうか」


ぼくは今日ここの図書館で小早川さんと会う約束をした。
飛行機の中で《お土産を渡したいから会えないかな??》と送ったのだ。
それにたいして、可愛い絵文字付きで了解の返事が来た。
こうしてぼく達はここへやって来た。


「はい、これお土産」


中に入ると、今日は人が少なく、席もたくさん空いている。
ぼく達は端の方の席へ座った。


「とっても嬉しいです、ありがとうございます!でも、こんなにたくさんいいんですか??」


笑顔で受け取ってくれたけど、袋の中を覗いて少し不安そうな顔をして聞いてきた。


「もちろん!それよりさ、そのお土産よりももっと渡したい物があるんだよ」


自分の鞄の中から紙袋で包装された物を取り出し、机の上をスライドさせるように小早川さんのもとへ送った。


「開けてみてもいいですか??」


ぼくが頷けば、そっと優しくそれを持ち上げて紙袋を開いた。


「これはっ!」


目を大きく見開いてそれを見る小早川さん。
ぼくがあげた紙袋の中には1冊の本。


「いつもその人の小説読んでるでしょ??出版社に見学に行ったときにね、先着順10名までサイン付きで売られていたのを偶然見つけてね」


小早川さんがいつも大切そうに持っている本は同じ作家さんの本。
ぼくは修学旅行で出版社へ行ったときにそれを見つけた。


「本当にありがとうございます!」


泣いてしまうんじゃないのかって思うくらいに喜んでくれた。
こんなにも喜んでくれる小早川さんを見ると、渡してよかったなぁって、ぼくの方が泣いてしまいそうになった。


「荒川先輩、これは私からです」


「本当?ありがとう、何かな??」


小さな紙袋を受け取って中に入っている物を取り出してみると、クマのストラップがコロンと出てきた。


「いいの?これ。ありがとう、すごく嬉しい!」


さっそくケータイに付けてみると、クリクリの真っ黒の目がぼくの方へ向いた。
それを見て小早川さんは嬉しそうに笑い、ぼくに修学旅行の話を聞かせてほしいと言った。


「うん、いいよ。そうだね、写真見せてあげるね?」


「ありがとうございます。私この写真と動画だけ見させてもらって、すごく楽しそうだなぁって思ってたんです」


「この写真と動画って??」


ご存知ないんですか?って首を傾げながら画面を見せてくれた。
画面を覗き込んだぼくはとても驚いた。