「服買いに行った時もさ、トナミちゃんと来たいなって思ったんだよね」


2日目のあの日、4人をコーディネートしてすごく楽しかった。
だけど、店を出るときに女の人の服がふと目に入って、その時トナミちゃんのことが頭に浮かんだ。
そして修学旅行の買い物に付き合ってくれた時みたいに、また一緒に、今度はゆっくり服を見に行きたいと思った。


「ワタシも先輩とまたお買い物したいです」


ニッコリ笑いながらそう答えてくれた。
そんな姿に何だか嬉しくなり、ボクは自分の小指を出して指切りをしようとトナミちゃんに提案。


「指切りげんまん」


笑顔で頷いてボクの小指に自分の小指を絡ませて楽しそうに歌い出した。


「ウソ付いたら……どうしましょう??」


「そうだな、何がいい??」


「んー……」


針千本飲ます気はないらしく、何か他のものを考えるトナミちゃん。
眉間にシワを寄せて真剣に考える姿に笑いそうになった。


「あっ!」


何かを思い付いたらしく、パッと顔を明るくした。
ボクはそれにまた笑いそうになるのを我慢して耳を傾けた。


「それじゃあ公開告白にしましょう」


「なんて悪質な」


「これくらいなら絶対約束破れないでしょ?」


気の抜けたような笑顔を向けるトナミちゃん。
だけどさ、そんな悪質な約束じゃなくても、ボクは破ったりしないんだけどな。
なんて、心の中でそう思いながら、ボクはトナミちゃんの提案に乗った。


「それじゃあ、ウソ付いたら公開告白」


「はい!指切った!」


ボクが復唱すると、元気に答え、歌のラストを歌って小指を離した。


「(おみくじに書かれていた内容を忘れさせてくれる笑顔だな……)」


ボクの頭に浮かんだのはあの時引いたおみくじ。
叶ってほしいと期待してしまいそうになる内容が書かれていたおみくじ。


《大吉:春の暖かな日。柔らかな日差しを浴びて、花が咲きにおい、蝶が飛び交う。そんなイメージです。今までの悪い運もパッと開けて、あなたの日々がはじまります。

恋愛:積極的に出れば吉

待ち人:現るしらせあり

願い:努力すれば叶う》


「悪い運もパッと開けて……か」


「先輩??」


「あっごめん!気にしないで」


そうだよ、ただのおみくじじゃんか。
今はトナミちゃんと話しているんだから、おみくじなんて気にしてる時じゃないな。

そう思ってボクはトナミちゃんに修学旅行での話の続きをした。
おみくじのことを頭の隅っこに追いやるように。