「松岡先輩!」


俺に向かって駆けてくる女の子。
大きな花の模様と下に向けて薄くなっていくグラデーションが鮮やかなワンピースを着て、鍔の大きい帽子を被り、ヒールの高いサンダルを履いた大人っぽい服装の蛍ちゃん。
そんな蛍ちゃんに俺は手を振った。


「よかった、ちゃんと来てくれた」


「そりゃあ約束したんですから来ます」


笑って言った俺にちょっとムッとしたように俺を下から睨む蛍ちゃん。
あー、可愛いな~。
そんなことを思いながら、俺は蛍ちゃんを連れてカフェに入った。


「これ全部蛍ちゃんにお土産」


注文をし終えて、俺はさっそく目的だったお土産を渡した。


「えっ!?こんなにたくさん!?」


申し訳なさそうにする蛍ちゃんにニッコリ笑顔を向けると、戸惑いながらもお礼を言ってくれた。


「ミニーのミミ付きカチューシャあるでしょ?俺はミッキーなんだよ~」


持ってきたミッキーのミミ付きカチューシャを着けて見せると吹き出した。


「ふふっ、ある意味似合ってます」


「えっ、酷くない?」


すると突然蛍ちゃんはミニーのミミ付きカチューシャを着けた。


「どうですか?」


「えっ、あ、うん……可愛いよ」


「何でそんな途切れ途切れなんですか」


笑う蛍ちゃん。
だって、まさか俺の目の前で着けてくれると思わなかったから……。


「そうだ!土産話も聞かせてあげるね」


4日間あったことをいろいろ話した。
それから写真も見せた。


「あっそういえばコスプレしたやつみんなに送ってくれた?」


実は枕投げをしたあの夜、俺は蛍ちゃんへ全員のコスプレ写真と動画を送っていた。
そして蛍ちゃんに他の女の子達にも送ってもらっていた。


「送りましたよ。先輩ホスト似合ってましたね」


「何だかありがとうと素直に喜べないんだけどその笑顔!」


そしてまた笑う蛍ちゃん。


「……俺ね、秋葉原でメイド喫茶行ったとき蛍ちゃんもいればな~って思った」


「……何でですか?」


不審そうに俺の目をジッと見つめて首を傾げる。
そんな姿を見て何だか口角が上がっているのがわかる。


「何でだろうね~?やっぱりマイスウィートハニー蛍ちゃんが近くにいないとね~」


ウインクをしながらそう言った俺に冷たい視線を送ってくる。


「蛍ちゃんも寂しかったでしょ~?俺がいなくて」


冗談半分でそう言った俺。


「別に……ただ、何だか違和感がありました、4日間」


いつもみたいに冷たくあしらわれると思ったら、想像とは違う反応。
言ってから普段言い慣れていない言葉に少し頬を赤くして俯いた蛍ちゃん。
いつもなら照れてるの~?可愛いね~なんて言うのに、今回はどうやら俺自身そんな余裕ないらしい。