「ナルみん、ここは……」


「やっぱり東京来たんだからこういうのしなきゃね~」


ナルに連れられてやって来た店の店頭に飾られた服を見て固まる俺と玲斗とリョー。
瀬那は俺達の気持ちを代弁するかのようにナルに尋ねた。すると、ナルはヘラヘラ笑いながら店を指差した。


「ごめんね、ぼくが着いて行くよなんて言ったから」


「いや、りょーすけの所為じゃねーよ」


「まあ、ナルならやりかねないとは思ってたけどね」


申し訳なさそうに笑うリョーに、フォローしながらナルを睨む玲斗。
俺も呆れたようにナルを見ながらそう言ったけど、ナルはそんなの気にしてないかのように俺達を引きずって店内に入った。


「みんなでコスプレしようね~」


その言葉と共に。


「スッゲーー!!カッケーー!!」


「なんかあんまりコスプレ感ないから普通にかっこいいな!!」


さっきまでナルを睨んでいた玲斗も、苦笑いだった瀬那も、服を見た途端テンションが上がったみたい。


「ねえねえ、俺何が似合うと思う~?」


そう聞いてきたナルに俺達はナルの方も向かず、口を揃えて「ホスト」と言った。


「俺に対して冷たくない!?」


半泣きのナルに瀬那はいつの間に選んだのか、ホストの服を渡した。


「レイはこれかな。リョウキチはこっち。カナデはこっちだな」


本当にいつの間に選んだの?


俺達は渡された服にそれぞれ着替えて、更衣室から出た。


「ご指名ありがとうございます、No.1のNARUMIです」


スーツを着崩したホスト姿のナル。


「逮捕するぞ?」


手錠をクルクル回すアメリカンポリス姿の瀬那。


「ご用改めである新撰組だ!なんてね?」


頭に長い鉢巻きをした新撰組姿のリョー。


「お国のために行って参ります」


片手にライフルを持った軍服姿の玲斗。


「はいはい、静かに。注射するよ?」


俺は聴診器を首にぶら下げ白衣を羽織った医者。


「やっぱりボク天才!みんなカッコイイ!!」


また嬉しそうに笑う瀬那。
だけど、突然ナルは「まだだよ!」と言った。
そして俺達にこの店の説明をし始めた。
それは簡単に言うと、それぞれの服装に応じて用意された箱から紙を1枚取り出してそこに書かれたセリフで演技するというもの。
まあ、なんか楽しそうだし、修学旅行のテンションもあってか俺達はOKした。


そして、それぞれ紙を選び終わり、ジャンケンをして順番を決めた。


順番は、ナル→リョー→玲斗→俺→瀬那だ。
順番が決まり紙を開いてセリフを確認すると、それぞれ笑ったり、「うわー…」と言って苦笑いだったり、反応は様々。


「それじゃあそろそろ始めようか!」


ナルの言葉でトップバッターのナル以外はナルの正面で座り、ナルは立って咳払いをした。