「隊長~玲斗が秋葉原の神に本当になってしまいました~」


「マジで秋葉原の神になるとは思わなかったよな」


ナルが右手を軽く挙げてそう言うと、瀬那も頷き、苦笑いで言った。


「レイ人気者だねぇ」


いつもの優しい笑みを浮かべながら、玲斗のフルコンボに軽く拍手をするリョー。


「悪い悪い!待たせたな」


満足したのかニッと笑いながら帰ってきた玲斗。


「いいよ、楽しめたようで何より」


「おお!!………だったらな………」


元気よく返事をした後、何かボソボソ言った玲斗。


「みんな~!メイドさんのとこ行くよ~!」


ナルは人質のつもりなのか、リョーと玲斗の首根っこを引っ張り連行した。


「どうするカナデ?」


「はぁー……2人が人質じゃしょうがないよね」


呆れたような笑顔で俺に聞いた瀬那に、ため息を吐きながら仕方なくナルの後ろを着いて行くことにした俺。


「おかえりなさいませご主人様!」


語尾にハートマークでも付きそうなくらいの猫なで声と共に発せられた有名なセリフ。


「君可愛いね~、君のことオーダーしちゃおうかな~?」


セリフは寒いけど顔はいいため、ウインクと共にナルにそう言われたメイド服の女の人達は顔を真っ赤にしている。


「ねぇ、今入ってきたご主人様、みなさんかっこよくない?」


「私は断然あの天パで高身長の人!」


「絶対あの眼鏡で制服着崩した人よ!」


「金髪で髪が長い人に決まってるわ!」


「ストレートの髪の笑顔の子よー!」


「毛先が跳ねてる呆れ顔の人だわ!」


騒がしいな……メイドなんだから客の話して盛り上がらないでよ。


「メイド服ってやっぱりいいよね~!」


「………楽しそうでよかったな」


ニコニコ笑うナルにいいだけ間を空けてそう言った瀬那の顔は何か悟りを開いたような安らかな笑顔。
絶対よかったななんて思ってないでしょ。


「………よかったのにな~………」


メイドを見てニコニコ笑っていたナルの顔が一瞬真面目な顔になって何かを呟いた。


「ねぇ…」


「すみませ~ん!萌え萌えサイダーくださ~い!」


俺が話しかけようとした瞬間、ナルは俺の声に気付かず、ヒラヒラと片手を挙げて注文をした。




「楽しかったね~」


「それナルだけな」


店を出てすぐにそう同意を求めてきたナルを一刀両断した玲斗。


「カナデ、いくらメイドさん達の声が苦手だからってあんなあからさまに耳塞がなくてもよかったんじゃない?」


「知り合いじゃないし、何のメリットもないからいいじゃん」


俺の言葉を聞いて「まったく…」なんて苦笑いをしたリョー。


「まあまあカナデ、次はお前の好きなとこだから」


あぁ、そうだ。
次は抹茶だ。和だ。


「さあ、無駄口叩いてないで早く行くよ」


「カナ、突然早歩き」


後ろで玲斗の声が聞こえたけど、気にせずに歩いて行く俺を走って追いかけてきた4人。
なんか微笑ましそうな笑顔で見られてるんだけど。何これ。