「東京だーー!!」


「さっきまではね。瀬那、今は神奈川だよ」


今日は修学旅行1日目。
飛行機で東京まで来た後、バスで横浜までやって来た。


「ナル、お前CAさんとかガイドさんとかにナンパするの止めろよ。バカに思われる」


「玲斗酷いっ!綺麗な人を見たら話しかけない方が失礼なんだよ?」


「何だかイタリア人みたいだね」


バスから降りるなり叫んだ瀬那にツッコム俺。
そんな俺の後ろでナルに呆れたように言った玲斗と、苦笑いのリョー。
そんな2人は放っておいて他の修学旅行生にナンパするナル。


「ほら、バカなことしてないで行くよ」


歩き出した俺にリョーと玲斗は付いて来たが、ナルは未だにナンパ中。


「ナルみん行くぞって!!」


「ちょっ、セツ子!!また会おうね~」


無理やりナルを引きずる瀬那。
ナルは遠ざかって行くナンパ相手に笑顔で手を振っている。


「マジでナル修学旅行来て大丈夫なのか?」


「そのうち勝手にどこか行っちゃいそうだね」


後ろを振り返ってボソッと言った玲斗とリョーの言葉に、俺は修学旅行が無事に終わるのか心配になった。






「それじゃあね~」


1日目は横浜自主研修。
俺達はまず赤レンガ倉庫へやって来た。
バスでここまで来たんだけど、ナルは案の定バス内で知り合った子をナンパしていた。


「なんて美しいフォルム!!この外観!!」


ナルのことは無視して赤レンガに飛び付く勢いで発狂した瀬那。
いつもはバカだけどこういう時は美術のセンス全開だ。


「とりあえず中入ろうか」


リョーのその声に反応した俺達は瀬那を無視して赤レンガの中へ。


「ってちょい!!ボクを置いて行かないでよ!!」


「お前が来ないのが悪いんだよバーカ」


ケタケタ笑いながら瀬那へそう言った玲斗を後ろから追いかける瀬那。


「2人とも、走ると危なっ」


リョーがそう声をかけた瞬間、2人は金髪碧眼の女の人に体当たりしてしまった。


「《ワァ!君達学生?オシャレな制服ね!》」


「《ホントだ!ねえ、良かったら一緒に写真撮ってくれないかな?制服なんて私達の学校には無かったのよ~》」


「おー、アイアムペン」


「いや、バカじゃない?いくら英語分からないからってさ、それじゃ私はペンですじゃん」


瀬那のアホ過ぎる発言にそう言うと、瀬那は必死だったのかちょっと泣きそうだ。


「《お姉さん達どこから来たの?美人ですね~!写真なら俺と撮りましょうよ!》」


そんな瀬那を押しのけてナルは満面の笑みで女の人達へ近付き英語をしゃべりだした。


「《すんません、コイツ達バカなんでほっといていいですよ》」


瀬那とナルを指差しながら冷め切った顔でそう言った玲斗も英語をしゃべりだした。