俺達が高1の時に作ったこの部室は、俺達のヒマをつぶすためだけに作られたヒマつぶし部の部室で、部の名前は、自由や解放を意味する、通称「liberty」。

この場所は朝だけじゃなく、授業をサボるときとか、休み時間、体調不良のとき、俺達がたまる場所としても使っている。

この朝霧稜南(あさぎりりょうなん)高校は、結構校則緩いところとかがあり、この部を作るのも、部室を貰うのも簡単だった。

だけど、俺達はずっとここへたまっている訳じゃない。
あくまでここは兼部として作ったもので、それぞれ主な部活は異なる。
例えば、玲斗とナルはバスケ部で、リョーは空手部だ。
瀬那は所属していないが、放課後美術の先生に絵を教わっている。
俺だけ何もしてないように思えるが、一応たまに陸上部へ遊びに行っているから、それで許してほしい。

つまり、俺と瀬那の場合は一応こっちが主な部活ということになる。
まあ、玲斗はバスケ部以外の部活に入り浸ったりして、いつもナルが探しに行っているらしいけど。


「そろそろHR始まる時間だよ」


壁の時計を見てそう言うと、パタリと本を閉じたリョーが「そうだね、帰ろうか」と言い、立ち上がった。
それに続くようにして、瀬那は画材道具の片付けを。ナルは高い身長を見せ付けるように背伸びを。玲斗は眼鏡をかけ直し、横髪を止めているヘアピンを付け直した。
俺もゆっくり立ち上がり、窓の外を見た。


「(今日も晴れだな……)」


「カナデ、どうしたの??」


リョーの言葉に振り返ると、ドアの近くに既に集まっていて、俺へ視線を向けている。


「いや、何でもない。帰るか」


さっきまで考えていたことを振り払い、俺はドアへ向かった。


ガラッ。


その音と共にドアは開き、俺達は同じ教室へ一歩歩き出した。


ガラッ。


その音と共にドアは閉められ、みんなよりは少し早い、朝の終わりを俺達は告げた。


「入学式昼からか~、俺パスね、ナルの定食屋行ってくるから」


「はぁ!?カナデだけずっる!!」


「残念瀬那、俺とりょーすけも行くから」


「待って!瀬那だけじゃなく、何で俺も除外!?」


「ぼくとカナデとレイだけで行くから、2人留守番だね」


「リョウキチまで!?ボクとナルさんも行くって!」


「いや、セツ子はいらん、俺だけ行く」


「ナルさんからのまさかの裏切り!?」


廊下に響いてこだまする声。


「あーもーっ、ホントうっせ」


笑顔で言ってしまうあたり、俺も結局こいつ達のこんな騒がしさが好きなのだと自覚する。

個性豊かで騒がしくて鬱陶しい。
けど、まあ、悪くない。