そして5月5日子供の日。


「坊ちゃん、お友達が見えましたよ」


縁側で本を読んでいると吉田さんが声をかけてきた。
吉田さんとは極道とは似つかわしい優しい笑顔でぼくとは9つ歳が離れた26歳のお兄さん的な人で、ぼくの家族の1人。


「ありがとう、ぼくもそっちへ行くね」


本を閉じて腰を上げ、みんなが待ってる庭へ向かった。

庭へ着くと、無表情だけど何でもスマートにこなし37歳だけど大分若く見える倉橋さんと、真っ直ぐだけど失敗も多く倉橋さんとは違って逆に28歳だけどもっと上に見える八田さんが鯉のぼりを運んで来ていた。


「りょうおじゃましてます」


ヒラヒラと手を振って挨拶したナルにぼくもいらっしゃいと声をかけた。


「本当にすごいね、本格的だね」


倉橋さんと八田さんが持って来た鯉のぼりを見て少し驚いた風にそう言ったカナデ。


「でっかいし、めっちゃ色使いイイな!」


興奮気味なセナはひたすらすごいと言った。


「こりゃ確かに人手いるな」


ニカッとぼくへ向けて笑いながら腕捲りをしたレイは手伝う準備万端みたい。


「坊ちゃん本当によろしいんですか??お手伝いなんてしていただいて……」


倉橋さんはぼくの方へ近付いてきて申し訳なさそうに言った。


「もちろん大丈夫だよ。それに大勢の方が楽しいでしょ?」


「坊ちゃんそろそろ始めましょうか」


倉橋さんに笑って答えた後、八田さんがぼくへそう言った。


「はーい!」


そう返事をしてみんなのもとへ駆け寄っていき鯉のぼりの準備を始めた。


「お前っ引っ張りすぎだ!!」


「ボクじゃないから!!ナルみんだから!!」


「俺に擦り付けないでよ!!」


レイとセナとナルは開始早々騒ぎ出した。


「3人共騒ぎすぎだから。もっと静かにしなよ」


呆れ顔で遠巻きに3人を眺めているカナデ。


「カナ!俺までこいつ達と一緒にすんなよ!」


「玲斗だけ逃げるなんてずるいよ!」


「ちょっと!ボクだけの責任にするなよ!」


「ちょっと!!俺に向かって走ってこないでよ!!暑苦しいから!!」


無理やりカナデも入れてさっきよりもっと騒ぎ出した。


「アハハハハッ」


4人がすごく楽しそうでぼくも楽しくなって笑った。


みんなで騒ぎながらぼく達は鯉のぼりを完成させた。
やっぱり大勢ですると早く終わるなぁ。


「坊ちゃん、柏餅の準備が出来ました」


3時頃になって吉田さんがぼく達へそう告げた。


「そろそろ3時ですのでみなさん休憩してはいかがですか?」


吉田さんは笑顔を向けて居間へ招き入れた。