さっき部活中、マネージャーみんなに部員全員からお返しをもらった。
それだけで充分なのに、こうして先輩からもらえない。
「あれは部員としてだろ??。これは俺から伊吹へ」
確かにバレンタインのとき岡本先輩だけに他の人には渡していないチョコを渡した。
だけど、あれはあたしが渡したくて渡したもの。
だからそれに対してのお礼なんてとてもじゃないけどもらえない。
「じゃあ伊吹、俺とじゃんけんしようぜ」
「えっ??」
そんなことを考えていると、急に先輩が拳を突き出してそんなことを言った。
「俺が勝ったらこれ伊吹のな。じゃあいくぞー、じゃーんけーん」
「えっえっ!!?」
事態が飲み込めず困惑するあたしのことなど露知らず、先輩は高らかに音頭をとる。
「ほい、俺の勝ちー」
慌てて出した手はパーで、チョキを出した先輩が勝った。
いきなりでズルいと思って何か言おうかと思ったけど、よく考えると、岡本先輩相手に勝てそうなことなどない気がして、もともと負け戦だったのではないかと考え、口を閉ざした。
約束通り、あたしは先輩からのプレゼントをありがたく頂くことに。
申し訳ないと心の底から思うのに、嬉しいとも心の底から思ってしまう。
だってこれは岡本先輩がほんの少しでもあたしのことを考えて選んでくれたものだから。
他の人に渡した様子がないところを見れば、わざわざこうしてあたしだけに渡してくれたということもどうしようもなく嬉しく思う。
「開けてみろよ」
そんなことを思って緩みそうになる口角を何とか引き締め、先輩に言われた通りリボンを解いて中を見てみる。
すると、中にはホワイトデーに合わせたのかバニラ色のマカロン。
そして、水色の天然石が付いたネックレス。
「そのネックレスさ、逆向きの雫みたいな形になってるだろ??、それな、五つ合わせると花の形になるんだ。俺以外の他の四人がそれぞれ伊吹の友達に違う天然石が付いたやつ渡してるから、それ五人でお揃いなんだ」
それを聞いて何て素敵なプレゼントなのだろうと嬉しくなり、じゃんけんに負けてよかったとすごく思った。
五人でのお揃いのものを選んでくれるなんて、本当に、岡本先輩も含めて、他の先輩もあたしの友達のことをよく見てくれているようで嬉しい。
「気に入ったみたいで何より」
「あっごめんなさい、つい」
ついつい気が緩んで一人笑ってしまっていた。
それが恥ずかしくなって慌てて口元をプレゼントの入っていた袋で隠そうとした。
けれどそれは阻まれる。
他でもない岡本先輩によって。
「俺さ、伊吹にすげー感謝してるんだ」
「あっあのっ……」
腕を掴まれたまま距離を縮められ、ドクンと心臓が痛くなる。
「ずっと俺は自分が無力で、それがどうしようもなく嫌だった」
ポツリと小さな声で呟かれた言葉にハッとなり、あのときのことを思い出す。
「守りたいのに守れない自分が酷く醜く見えて、本当にただ辛かった」
それは紬ちゃんを返して欲しいと必死で頭を下げたあの日。
おばあさんとも、おじいさんとも和解をすることができたあの日。
紬ちゃんが帰ってきたあの日。
「そんな俺を救ってくれたのは伊吹、お前だ」
「あたしは何もしていません。ただ、先輩の笑った顔が見たかっただけです」
そう、あたしはただ自分のやりたいことをしただけ。
だから先輩に感謝されることなんて……。
「そのネックレスに付いてる石な、アクアマリンっていうやつなんだ」
「えっ??」
そう思って俯きそうになったあたしに、突然先輩はそんなことを。
突然何を言っているのかわからなくて首を傾げる。
それだけで充分なのに、こうして先輩からもらえない。
「あれは部員としてだろ??。これは俺から伊吹へ」
確かにバレンタインのとき岡本先輩だけに他の人には渡していないチョコを渡した。
だけど、あれはあたしが渡したくて渡したもの。
だからそれに対してのお礼なんてとてもじゃないけどもらえない。
「じゃあ伊吹、俺とじゃんけんしようぜ」
「えっ??」
そんなことを考えていると、急に先輩が拳を突き出してそんなことを言った。
「俺が勝ったらこれ伊吹のな。じゃあいくぞー、じゃーんけーん」
「えっえっ!!?」
事態が飲み込めず困惑するあたしのことなど露知らず、先輩は高らかに音頭をとる。
「ほい、俺の勝ちー」
慌てて出した手はパーで、チョキを出した先輩が勝った。
いきなりでズルいと思って何か言おうかと思ったけど、よく考えると、岡本先輩相手に勝てそうなことなどない気がして、もともと負け戦だったのではないかと考え、口を閉ざした。
約束通り、あたしは先輩からのプレゼントをありがたく頂くことに。
申し訳ないと心の底から思うのに、嬉しいとも心の底から思ってしまう。
だってこれは岡本先輩がほんの少しでもあたしのことを考えて選んでくれたものだから。
他の人に渡した様子がないところを見れば、わざわざこうしてあたしだけに渡してくれたということもどうしようもなく嬉しく思う。
「開けてみろよ」
そんなことを思って緩みそうになる口角を何とか引き締め、先輩に言われた通りリボンを解いて中を見てみる。
すると、中にはホワイトデーに合わせたのかバニラ色のマカロン。
そして、水色の天然石が付いたネックレス。
「そのネックレスさ、逆向きの雫みたいな形になってるだろ??、それな、五つ合わせると花の形になるんだ。俺以外の他の四人がそれぞれ伊吹の友達に違う天然石が付いたやつ渡してるから、それ五人でお揃いなんだ」
それを聞いて何て素敵なプレゼントなのだろうと嬉しくなり、じゃんけんに負けてよかったとすごく思った。
五人でのお揃いのものを選んでくれるなんて、本当に、岡本先輩も含めて、他の先輩もあたしの友達のことをよく見てくれているようで嬉しい。
「気に入ったみたいで何より」
「あっごめんなさい、つい」
ついつい気が緩んで一人笑ってしまっていた。
それが恥ずかしくなって慌てて口元をプレゼントの入っていた袋で隠そうとした。
けれどそれは阻まれる。
他でもない岡本先輩によって。
「俺さ、伊吹にすげー感謝してるんだ」
「あっあのっ……」
腕を掴まれたまま距離を縮められ、ドクンと心臓が痛くなる。
「ずっと俺は自分が無力で、それがどうしようもなく嫌だった」
ポツリと小さな声で呟かれた言葉にハッとなり、あのときのことを思い出す。
「守りたいのに守れない自分が酷く醜く見えて、本当にただ辛かった」
それは紬ちゃんを返して欲しいと必死で頭を下げたあの日。
おばあさんとも、おじいさんとも和解をすることができたあの日。
紬ちゃんが帰ってきたあの日。
「そんな俺を救ってくれたのは伊吹、お前だ」
「あたしは何もしていません。ただ、先輩の笑った顔が見たかっただけです」
そう、あたしはただ自分のやりたいことをしただけ。
だから先輩に感謝されることなんて……。
「そのネックレスに付いてる石な、アクアマリンっていうやつなんだ」
「えっ??」
そう思って俯きそうになったあたしに、突然先輩はそんなことを。
突然何を言っているのかわからなくて首を傾げる。
