瑠美は人見知りで照れ屋。

だから今も顔が真っ赤なリンゴのようになっている。

だけど、いつもの瑠美からは想像できないそのハッキリとした言葉に私達は驚いた。

こんなに自分の気持ちを言うなんて……。

でも、それと同時にわかった。

瑠美は本当に長坂先輩のことが好きなんだと。


「話してくれてありがとう、瑠美」


「舞璃……」


「次はあたしだね」


頑張って話してくれた瑠美。

そのことにお礼を言うと、瑠美はどこか安心したように微笑んだ。

それを見て、あたしは一呼吸置き、瑠美も頑張ってくれたんだから、次は自分が頑張る番だと心を落ち着かせた。


「あたしは……」


そしてあたしも昨日のことを話し始める。







「伊吹」


部活終わり、帰る準備を終わらせて外に出たあたしを岡本先輩が呼び止めた。


「お疲れ様です岡本先輩」


終わったばかりで熱いのか、先輩はジャージを着ることなく、肩に羽織っていた。


「お疲れ。あのさ、ちょっとだけ時間くれねーか??」


突然のその言葉に不思議に思いながら、あたしはそれに頷く。

そして隣にいた蛍に先に帰っていてと声をかけようと顔を向けると……。


「あれ??蛍??」


そこには蛍の姿がない。


「今さっきナルが無理矢理連れて行ったぞ」


ケラケラと笑いながら先輩は言ったけど、いつの間にかわからなかったあたしはそれに対して苦笑い。


「まあそういうことだから、伊吹、ちょっと付いて来てくれ」


そんなあたしにはお構いなく、先輩はそう言うとジャージをはためかせて歩いていく。

あたしは慌ててそれに付いて行った。



そして連れて来られたのは屋上。

さすがにこの時間になると誰もいない。

風の抜ける屋上は少し寒いけど、ここから見える景色はとても綺麗。

ちょうど桜が咲いていて、ピンクが目の前に広がっている。


「伊吹、これ」


そんな景色に見惚れていると、突然岡本先輩が何かを手渡した。


「??……、あの、これは……」


でもそれが何なのかわからなくて、頭にハテナマークが浮かぶ。

そんなあたしに、岡本先輩は“あー……えっと……”と目線を逸らした。


「今日は、ほら……ホワイトデーだろ??」


益々意味がわからなくて首を傾げていると、先輩が窺うように呟いた。


「えっ……それってもしかしてお返しってことですか??……」


「ホワイトデーっつったらそりゃそうだろ」


「えぇ!!?ダッダメですよっ!!」


当然のように言われたそれに勢いよく首を横に振ると、岡本先輩は怪訝そうな顔を。

でも、あたしがそうしたのにはちゃんと理由がある。

だって……。


「お返しならさっきもらいました!」