それを思い切って尋ねた瞬間、すごい勢いで静止された。
「ちょっと待って、勘違いしないように言っておくけど、瑠美ちゃん以外には渡してないし渡す気ないから」
「えっ……」
真剣な目で見つめられる。
まるで私が長坂先輩の中で特別だと言われているみたいな感覚に陥りそうになる。
だけど、そんなことはないと自分の気持ちを押し留める。
「俺さ、瑠美ちゃんのおかげでまた走ろうと思った」
下を向いて必死に気持ちを抑えていると、頭上から静かに響く声。
「瑠美ちゃんがいなきゃ、多分俺はずっとあのまま。今、最高に楽しいと思えているのは瑠美ちゃんがいてくれたおかげだよ」
本当にありがとう。
そう言われ、益々気持ちが膨らみそうになる。
ダメダメと気持ちを抑えつける。
なのに。
「瑠美ちゃんは俺にとって特別だよ。だからお返しも瑠美ちゃんにしかしない。俺がそうしたいと思ったんだよ」
違うってわかってる。
特別の意味は違うって。
だけど、もし……。
もし、その特別が……。
「そのネックレスに付いてある黒色の天然石はスピネルっていう石なんだ。瑠美ちゃんは黒より白とかのほうが似合うと思ったんだけど、スピネルは目標達成のお守りになるって知ったから。俺のことを瑠美ちゃんが助けてくれたように、今度は俺が瑠美ちゃんの叶えたいことに協力して、そのために助けたいと思う。それは俺のそういう気持ちがあるんだよって思ってもらえるようにっていうお守りの意味と、それから……」
グッと手を引かれ、私は先輩のすぐ近くに引き寄せられた。
驚きのあまり慌てて顔を上げると、そこにはスピネルと同じ真っ黒な瞳。
「他のやつじゃなく、俺がいるから。他のやつじゃなく、俺が誰より先に助けるから。他のやつじゃなく、俺だけを頼って。そういう誓約物ね」
その優しい微笑みを向けられた瞬間、先輩と出会ってから今までのことが一気に頭の中を駆け巡った。
楽しかった、嬉しかった。
もっと一緒にいたい、もっと近くにいたい。
先輩の笑った顔が見たい、先輩の幸せそうな顔が見たい。
いつもやる気のないようで、本当にやりたいことや大切な仲間のためになら一生懸命になる先輩。
そんな先輩の傍に、誰より傍にいたい。
もしも、特別という言葉が、そういう特別なら。
もしそうなら。
私は気付いてしまった。
こんな風に考えてしまうのは……。
こんな風に顔が熱くなってしまうのは……。
それは、全部、全部……。
長坂先輩のことが好きだから。
それから後のことはよく覚えていない。
気付けば私は誰もいない教室で舞璃達といた。
「私が長坂先輩のことを好きだと気付いたのは、先輩の言うように、本当にずっと傍にいてくれたらどんなに素敵だろうって思ったから……。でも……」
でも、本当は、ずっと気付かなかっただけで……。
「私は多分……、出会ったあのときから先輩のことが好きだったんだと思うの……」
今になってようやくわかる。
初めて出会ったあのとき、私はあの人の優しい声に惹かれていた。
クッキーを攫っていったあの人の優しい声に。
その口からは毒を吐くのを見ているのに、なぜか私は酷い人だとは思えなかった。
その理由は、いつでもその声は優しかったから。
好きだと気付いたとき、何でかわからないけど泣きそうな気持ちになった。
辛いはずないのにどうしてだろうと思っていた。
でもようやくわかった。
泣きそうになった理由、それは嬉しかったから。
先輩のことを好きだとわかって嬉しかったから。
だからあの溢れそうになった涙は、嬉し泣きのもの。
私は心の底から思います。
好きになれて、それに気付けて、本当によかったと。
長坂先輩からのお返しはスピネルの付いたネックレスとマカロン。
私が好きになったのは、優しく包む声。
「ちょっと待って、勘違いしないように言っておくけど、瑠美ちゃん以外には渡してないし渡す気ないから」
「えっ……」
真剣な目で見つめられる。
まるで私が長坂先輩の中で特別だと言われているみたいな感覚に陥りそうになる。
だけど、そんなことはないと自分の気持ちを押し留める。
「俺さ、瑠美ちゃんのおかげでまた走ろうと思った」
下を向いて必死に気持ちを抑えていると、頭上から静かに響く声。
「瑠美ちゃんがいなきゃ、多分俺はずっとあのまま。今、最高に楽しいと思えているのは瑠美ちゃんがいてくれたおかげだよ」
本当にありがとう。
そう言われ、益々気持ちが膨らみそうになる。
ダメダメと気持ちを抑えつける。
なのに。
「瑠美ちゃんは俺にとって特別だよ。だからお返しも瑠美ちゃんにしかしない。俺がそうしたいと思ったんだよ」
違うってわかってる。
特別の意味は違うって。
だけど、もし……。
もし、その特別が……。
「そのネックレスに付いてある黒色の天然石はスピネルっていう石なんだ。瑠美ちゃんは黒より白とかのほうが似合うと思ったんだけど、スピネルは目標達成のお守りになるって知ったから。俺のことを瑠美ちゃんが助けてくれたように、今度は俺が瑠美ちゃんの叶えたいことに協力して、そのために助けたいと思う。それは俺のそういう気持ちがあるんだよって思ってもらえるようにっていうお守りの意味と、それから……」
グッと手を引かれ、私は先輩のすぐ近くに引き寄せられた。
驚きのあまり慌てて顔を上げると、そこにはスピネルと同じ真っ黒な瞳。
「他のやつじゃなく、俺がいるから。他のやつじゃなく、俺が誰より先に助けるから。他のやつじゃなく、俺だけを頼って。そういう誓約物ね」
その優しい微笑みを向けられた瞬間、先輩と出会ってから今までのことが一気に頭の中を駆け巡った。
楽しかった、嬉しかった。
もっと一緒にいたい、もっと近くにいたい。
先輩の笑った顔が見たい、先輩の幸せそうな顔が見たい。
いつもやる気のないようで、本当にやりたいことや大切な仲間のためになら一生懸命になる先輩。
そんな先輩の傍に、誰より傍にいたい。
もしも、特別という言葉が、そういう特別なら。
もしそうなら。
私は気付いてしまった。
こんな風に考えてしまうのは……。
こんな風に顔が熱くなってしまうのは……。
それは、全部、全部……。
長坂先輩のことが好きだから。
それから後のことはよく覚えていない。
気付けば私は誰もいない教室で舞璃達といた。
「私が長坂先輩のことを好きだと気付いたのは、先輩の言うように、本当にずっと傍にいてくれたらどんなに素敵だろうって思ったから……。でも……」
でも、本当は、ずっと気付かなかっただけで……。
「私は多分……、出会ったあのときから先輩のことが好きだったんだと思うの……」
今になってようやくわかる。
初めて出会ったあのとき、私はあの人の優しい声に惹かれていた。
クッキーを攫っていったあの人の優しい声に。
その口からは毒を吐くのを見ているのに、なぜか私は酷い人だとは思えなかった。
その理由は、いつでもその声は優しかったから。
好きだと気付いたとき、何でかわからないけど泣きそうな気持ちになった。
辛いはずないのにどうしてだろうと思っていた。
でもようやくわかった。
泣きそうになった理由、それは嬉しかったから。
先輩のことを好きだとわかって嬉しかったから。
だからあの溢れそうになった涙は、嬉し泣きのもの。
私は心の底から思います。
好きになれて、それに気付けて、本当によかったと。
長坂先輩からのお返しはスピネルの付いたネックレスとマカロン。
私が好きになったのは、優しく包む声。