目の前には困った顔をするナル。

ぼくもわかってはいるんだけど、やっぱり何か少し緊張してしまう。

今から渡しにいくわけじゃないのにね。


「そうだね、何かこうして話し合うなんてなかったからちょっと緊張してたね。改めて、小早川さん達へ贈るプレゼントを考えようか」


何とか冷静になろうと息を吐き、そう口に出す。

すると、ようやく他の三人も気持ちが落ち着いたのかいつもの表情になった。


「みんな何がいいかとか考えてみた??」


サラッと金色の髪を流しながら首を傾げたセナ。


「一応いろいろ考えてはみたけど、どこまでがOKなのか正直測りかねる」


「だよな。言ってもホワイトデーのプレゼントだから、あんまり重過ぎるのもどうかと思うし」


「そうそう、それでいろいろ考えていたら結局何がいいのか悪いのかわからなくなってくるし」


「そうなんだよ、さっきまでいいじゃんって思ってたやつが何か微妙に思えてくるし」


セナの言葉にカナデが答えると、それに頷くレイ。

そしてそんなレイに頷くカナデに、またまたそんなカナデに頷くレイ。


「まあまあ、とりあえずいろいろ考えたのはよくわかったから」


放っておくといつまでも続けそうな二人に、ナルはもういいとストップをかける。


「こういうときこの二人って本当に息が合うね」


「テンパってるのがよくわかる。こんな二人ホント珍しい」


ナルに諭される二人を見ながら小さく呟いたぼくの言葉に、セナも同じような感想を漏らす。

まあ、とか言ってるぼく達もテンパってるし、諭してるナルも実際いつもの調子じゃない。

話を進める前にぼく達が落ち着くところから始めなくちゃいけないね。


「ねえ、ここにいるんじゃなくて、実際外に出てみない??、いろいろ見たり聞いたりすれば見つかると思うし」


何より、中にいたら堂々巡りをしそうで怖い。

そう思って提案すると。


「そうだね、外に出よう」


「そのほうが冷静になれそうだしな」


「ボク達だけじゃいい案思い付かなさそうだしね」


「まあ、実際いろいろ見るほうがインスピレーション浮かぶからね〜」


みんなすぐに頷いてくれ、ぼく達はさっそく外に出るために鞄を手に取った。

それから電気に乗り、ぼく達は隣町にある大きなショッピングモールへ。

中に入るとすぐにあちこちに見えるホワイトデーの文字。

何だか一気に現実味を帯びて一瞬言葉に詰まる。


「それじゃあみんな行こうか」


セナがそう言うと、ぼく達は目配せをし合い、大きく頷いた。

まるで戦場に向かうかのように。