「というわけで、今から男子会始めま〜す」


卒業式が終わっておよそ二週間。

厳密に言うと3月13日の放課後。

段々近づいて来る修了式のため在校生である俺達も授業が早く終わる。

その上今日は部活は無い日。

いつも通りlibertyの部室に集まった俺達は少し前から相談していた“あるプロジェクト”についてついに今日話し合うことに。

確かに大切なプロジェクトであるけど、あまりにも緊張したような顔をする四人。

俺はそんな四人の緊張をほぐそうといつもの間延びした軽い口調で冗談めかしてそう言ってみる。


「………」


なのに四人は黙ったまま。

いつもならツッコミ入れたり罵倒してきたりするくせに……。

俺は苦笑いをした。


「ちょっと固くなりすぎじゃない??、そんなんじゃホワイトデーのお返しのいいプレゼントなんて浮かばないよ〜??」


そう、俺達がわざわざ集まって作戦会議をすることになったその議題とは、明日のホワイトデーについて。

去年まではそれぞれどんなお返しをして……というかしていたのかすら知らない……、っていう感じだった。

なのにどうして今年はこうして全員が集まっているのかというと……。


「そうだね、何かこうして話し合うなんてなかったからちょっと緊張してたね。改めて、小早川さん達へ贈るプレゼントを考えようか」


小さく息を吐いてから困ったような笑顔を浮かべたりょうの言葉は正しくそれだ。

俺達はバレンタインデーのとき、りょうは詩音ちゃんから、玲斗は舞璃ちゃんから、セツ子は杏奈ちゃんから、奏ちゃんは瑠美ちゃんから、そして俺は蛍ちゃんから、それぞれチョコをもらっていた。

お互いそれを知ったのは後日で、それでいてお互いに詳しい経緯は話すことなく、ただもらったというちょっとした自慢大会みたいになった。

普段そんなこと言ってこないのにね〜。

まあ、とにかく俺達は仲良し五人組の女の子からそれぞれもらっていた。

そのときは気付かなかったけど、こうして3月に入ってからようやく俺達はホワイトデーの存在に気付く。

そして悩み始めた。


何をあげたら喜んでくれるのか。


女の子のことなら完璧なこの俺でさえ、なぜかどうしたらいいかわからなくなった。

そこで、俺達はそれなら五人にお揃いのものをあげたらすごく喜んでくれるんじゃないかということに。

そうしてこの場が出来上がるわけだけど、いざ集まってみたら何てまあ余裕のないこと。

本当に大丈夫なのこれ。