「〜〜♪〜〜♪♪」
ホントに今日から3月なのかと疑いたくなる寒さ。
これからどんどん暖かい春に近付くなんて到底想像できない。
そんなことを思いながら、誰もいない渡り廊下で口笛を吹く。
曲はもちろん今日にピッタリな“蛍の光”。
だって今日は卒業式だから。
ボク達libertyは毎度のことながら式には出席しない。
理由はもちろん面倒だから。
部室でダラダラと過ごし、式が終わった頃合いを見てボク達はそれぞれバラけた。
担任のセンセーに捕まらないように。
そこでボクがやってきたのは校庭と反対方向にある棟を繋ぐ、外にある渡り廊下。
ここからじゃ卒業式後の様子なんて全く見えない。
だけど笑い合う声や、号泣する声が微かに聞こえる。
剥き出しだから近くに来られたらすぐに居場所がバレてしまう。
でもこんな日は誰も来ない。
それをわかっているため呑気にボクは音を奏で続ける。
ボク以外誰もいないため、その口笛はよく響く。
「〜〜♪〜〜♪〜〜♪♪……」
高音が難しいな、と思いながらもゆっくりと低音で曲を終えた。
「上手いな」
「っ!!?」
そのとき、突然近くで聞こえた声。
まさか人が来るなんて。
いつの間に近くに来たんだ。
いったい誰が。
驚きのあまり肩をビクリと上に上げた後、勢いよく声の主のほうへ視線を向ける。
するとそこにいたのは……。
「臥龍先輩っ!?」
「お前は本当によく驚くやつだ」
表情一つ変えずにそう言いながらゆっくり歩いて来る先輩。
臥龍先輩にはよくそう言われてきたけど、実際ボクが驚き過ぎなんじゃなくて、臥龍先輩が気配消し過ぎな気が……。
「あっ、先輩卒業おめでとうございます」
思い出したように慌てて頭を下げてそう言うと、臥龍先輩は“それより”と言った。
3年生にとっては卒業のことはさておきなんてないと思うのに、先輩はまるで卒業のことには興味のないように続けた。
「砺波は支えてくれただろ??」
ニヤリと笑って言われたそれに、球技大会のときのことを思い出す。
「はい、先輩の言う通りでしたね。ボクはトナミちゃんに救われましたよ」
あれだけ盛大に行ったことだから、もちろん3年生の耳にも入っているらしい。
嘘をつく理由もないため、ボクは正直に答える。
すると、先輩は嬉しそうな顔で笑った。
先輩は言ったことないけど、ずっとトナミちゃんのことをまるで妹のように可愛がってきたと思う。
誰より、トナミちゃんを気に入っていたと思う。
そして、トナミちゃんもまた先輩を姉のように慕っていた。
全然違う二人なのに、そういう関係を築けるなんて、そういう人がいるなんて、ちょっといいなと思っていた。
「それじゃあ私はそろそろ行く」
そう言って踵を返した。
きっとこの後トナミちゃん達に会いに行くんだろう。
でも先輩は泣かないだろうなぁ。
なんて考えていると、先輩が何か思い出したように振り返った。
「そうだ、後藤」
「はい??」
「確かに私は砺波を支えてやってほしいと言った。が、お前のことを応援しているわけじゃない。砺波は私の可愛い後輩だ。お前みたいにチャラついた見た目のやつにくれてやる気はないから、そうなったときは私に土下座をしに来い、以上だ」
「えっ??……ちょっ!なにっ!?どういう意味ですか!!?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてそう言うと、さっさと歩き出す先輩。
ボクは意味がわからなくてその背中に問いかける。
なのに返事は来ない。
「臥龍先輩!!」
呼び止めなんか聞かず、先輩は姿を消した。
いったい何だったのか結局わからなかった。
「ありがとうございますも言う暇与えてくれなかったな……」
ボクが今まで出会った中で一番変な人。
だけど、一番凄いと思った人。
尊敬してたことすら言わせてくれず、本当に自分勝手な人だ。
「日向さああぁぁぁん!!、俺達絶対全国行ってやりますからああぁぁぁ!!」
「っ!!……、ボクの幼なじみにも変なやついたな」
多分屋上で叫んだであろうレイの声に、バレることをわざわざするなんてバカだなと思いながら、ぐっと伸びを一つ。
そしてセンセーに連れられてくるであろうレイのもとへ歩みを進める。
「〜♪♪〜〜♪〜〜♪〜〜♪♪」
蛍の光はさっきよりも軽やかに響いた。
ホントに今日から3月なのかと疑いたくなる寒さ。
これからどんどん暖かい春に近付くなんて到底想像できない。
そんなことを思いながら、誰もいない渡り廊下で口笛を吹く。
曲はもちろん今日にピッタリな“蛍の光”。
だって今日は卒業式だから。
ボク達libertyは毎度のことながら式には出席しない。
理由はもちろん面倒だから。
部室でダラダラと過ごし、式が終わった頃合いを見てボク達はそれぞれバラけた。
担任のセンセーに捕まらないように。
そこでボクがやってきたのは校庭と反対方向にある棟を繋ぐ、外にある渡り廊下。
ここからじゃ卒業式後の様子なんて全く見えない。
だけど笑い合う声や、号泣する声が微かに聞こえる。
剥き出しだから近くに来られたらすぐに居場所がバレてしまう。
でもこんな日は誰も来ない。
それをわかっているため呑気にボクは音を奏で続ける。
ボク以外誰もいないため、その口笛はよく響く。
「〜〜♪〜〜♪〜〜♪♪……」
高音が難しいな、と思いながらもゆっくりと低音で曲を終えた。
「上手いな」
「っ!!?」
そのとき、突然近くで聞こえた声。
まさか人が来るなんて。
いつの間に近くに来たんだ。
いったい誰が。
驚きのあまり肩をビクリと上に上げた後、勢いよく声の主のほうへ視線を向ける。
するとそこにいたのは……。
「臥龍先輩っ!?」
「お前は本当によく驚くやつだ」
表情一つ変えずにそう言いながらゆっくり歩いて来る先輩。
臥龍先輩にはよくそう言われてきたけど、実際ボクが驚き過ぎなんじゃなくて、臥龍先輩が気配消し過ぎな気が……。
「あっ、先輩卒業おめでとうございます」
思い出したように慌てて頭を下げてそう言うと、臥龍先輩は“それより”と言った。
3年生にとっては卒業のことはさておきなんてないと思うのに、先輩はまるで卒業のことには興味のないように続けた。
「砺波は支えてくれただろ??」
ニヤリと笑って言われたそれに、球技大会のときのことを思い出す。
「はい、先輩の言う通りでしたね。ボクはトナミちゃんに救われましたよ」
あれだけ盛大に行ったことだから、もちろん3年生の耳にも入っているらしい。
嘘をつく理由もないため、ボクは正直に答える。
すると、先輩は嬉しそうな顔で笑った。
先輩は言ったことないけど、ずっとトナミちゃんのことをまるで妹のように可愛がってきたと思う。
誰より、トナミちゃんを気に入っていたと思う。
そして、トナミちゃんもまた先輩を姉のように慕っていた。
全然違う二人なのに、そういう関係を築けるなんて、そういう人がいるなんて、ちょっといいなと思っていた。
「それじゃあ私はそろそろ行く」
そう言って踵を返した。
きっとこの後トナミちゃん達に会いに行くんだろう。
でも先輩は泣かないだろうなぁ。
なんて考えていると、先輩が何か思い出したように振り返った。
「そうだ、後藤」
「はい??」
「確かに私は砺波を支えてやってほしいと言った。が、お前のことを応援しているわけじゃない。砺波は私の可愛い後輩だ。お前みたいにチャラついた見た目のやつにくれてやる気はないから、そうなったときは私に土下座をしに来い、以上だ」
「えっ??……ちょっ!なにっ!?どういう意味ですか!!?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてそう言うと、さっさと歩き出す先輩。
ボクは意味がわからなくてその背中に問いかける。
なのに返事は来ない。
「臥龍先輩!!」
呼び止めなんか聞かず、先輩は姿を消した。
いったい何だったのか結局わからなかった。
「ありがとうございますも言う暇与えてくれなかったな……」
ボクが今まで出会った中で一番変な人。
だけど、一番凄いと思った人。
尊敬してたことすら言わせてくれず、本当に自分勝手な人だ。
「日向さああぁぁぁん!!、俺達絶対全国行ってやりますからああぁぁぁ!!」
「っ!!……、ボクの幼なじみにも変なやついたな」
多分屋上で叫んだであろうレイの声に、バレることをわざわざするなんてバカだなと思いながら、ぐっと伸びを一つ。
そしてセンセーに連れられてくるであろうレイのもとへ歩みを進める。
「〜♪♪〜〜♪〜〜♪〜〜♪♪」
蛍の光はさっきよりも軽やかに響いた。
