カレンダーは気付けば一周して新しいものへと変わっている。
お正月のときに新しいものへと変えたのはぼくなんだから、本当はそんなこと知っている。
だけど改めてそれを実感してしまうのは、今日が大きな節目の日だからかな。
「まあ節目って言っても、この寒さは2月と全く変わりはしないんだけどね……」
3月1日。
季節的には一応春ということになっているけど、やっぱりまだ初旬の今は冬と変わりはしない冷気。
外にいるには厳しすぎて、ぼくは三階の渡り廊下でそっと窓の外を見下ろした。
そこにいるのは花を抱えた3年生と、そんな3年生の周りに集まる1年生と2年生。
そう、今日は卒業式なんだ。
ぼく達libertyは今年の入学式、去年の卒業式同様に式に出席することなく部室で過ごしていた。
興味がないから行く意味なんてない。
そういう理由で行かない。
だから体育館で厳かに行われているであろう式なんて関係なく、部室でぼく達は毎回楽しく過ごしていた……。
はずなのに……。
「今年はどうしたものかな……」
何でだろうね。
今年はみんな変な感じ。
どことなく静か。
いつもなら率先して騒ぐレイとナルはやけに落ち着いていた。
そんなとき、静かな雰囲気に耐えられないセナがいつもなら話し出すのに、今日はボーッとしていた。
カナデは……何となくみんなの様子を窺っているように見えた。
みんな変な感じ。
みんな……。
もちろんぼくも……。
でもその理由は何??
みんながおかしい理由は??
「知らないふりなんてできないのにね……」
そうだよ、理由はわかってる。
ぼくは外に集まるある場所に目を向けた。
そこにいるのはぼくの部活の仲間達。
そして、囲まれている中の一人にあの人の姿。
「桐山先輩……」
ぼく達空手部の主将だった人。
総体を終えた後、3年生がいなくなった空手部。
最初は不安だったけど、思っていたより大変ではなかった。
そう、思っていたんだ。
だけど、今日を迎えてやっとわかった。
「桐山先輩が近くにいたからなんだ……」
引退したとは言え、同じ学校にいた。
だから何かあってもすぐに桐山先輩に相談できた。
助けてもらえていた。
だけど……。
だけどそれはもうできない。
だって、今日で本当に離れてしまうから。
受け止めなければいけない不安感。
それを目の前に突きつけられるのが嫌で、それでも目の前で見送りたいという気持ちもあって、だからこそ今日のぼく達はいつもと違っていたんだ。
わかっているのに、どうしてもあの中に入っていこうと思えない。
そんな風に思うぼくはおかしいのかな??……。
「あっ、ナルだ」
なんて考えていると、校庭から少し離れた木の陰にいるナルを見つけた。
いつも通り女の子達に囲まれている。
だけど、いつもと違ってその視線は女の子ではない場所に。
バスケ部のもとに。
ああ、ぼくと同じこと考えているんだ。
すぐにわかってしまったそれに、ぼくは苦笑い。
ナルもぼくも、お互いこうして離れた場所からしか見れないんだね。
同じだ。
まるでぼくを客観的に見ているようで、目を閉じようとしたそのとき。
「日向さああぁぁぁん!!、俺達絶対全国行ってやりますからああぁぁぁ!!」
「っ!!?」
外から聞こえたその声は確かにレイのもので、校庭にいる生徒達は一気に屋上のほうへ目を向ける。
それはナルも同様に。
「何やってるのレイ、そんなに注目集めたらすぐに先生にバレる……っ!!」
ナルが笑ってる。
スッキリした表情をして。
ぼくはハッとなって自分の口元に手を当てた。
触れたそこは、嬉しそうに上に上がっている。
ぼくも笑ってる。
レイの言葉がぼくの胸の中に抱えていた思いと同じで、それを大きな声で叫んでくれたから。
「本当に……、男気溢れるレイは違うよね」
クスクス笑いながら、ぼくは屋上の階段から先生と一緒に降りてくるであろうレイを迎えに行くことに。
桐山先輩、ぼくはレイみたいに叫んでないから伝わらないことなんて重々承知です。
でも、あの言葉はぼくの思いと同じです。
それを証明するのは今じゃなくて、もう少し先。
先輩と約束した総体のときに。
お正月のときに新しいものへと変えたのはぼくなんだから、本当はそんなこと知っている。
だけど改めてそれを実感してしまうのは、今日が大きな節目の日だからかな。
「まあ節目って言っても、この寒さは2月と全く変わりはしないんだけどね……」
3月1日。
季節的には一応春ということになっているけど、やっぱりまだ初旬の今は冬と変わりはしない冷気。
外にいるには厳しすぎて、ぼくは三階の渡り廊下でそっと窓の外を見下ろした。
そこにいるのは花を抱えた3年生と、そんな3年生の周りに集まる1年生と2年生。
そう、今日は卒業式なんだ。
ぼく達libertyは今年の入学式、去年の卒業式同様に式に出席することなく部室で過ごしていた。
興味がないから行く意味なんてない。
そういう理由で行かない。
だから体育館で厳かに行われているであろう式なんて関係なく、部室でぼく達は毎回楽しく過ごしていた……。
はずなのに……。
「今年はどうしたものかな……」
何でだろうね。
今年はみんな変な感じ。
どことなく静か。
いつもなら率先して騒ぐレイとナルはやけに落ち着いていた。
そんなとき、静かな雰囲気に耐えられないセナがいつもなら話し出すのに、今日はボーッとしていた。
カナデは……何となくみんなの様子を窺っているように見えた。
みんな変な感じ。
みんな……。
もちろんぼくも……。
でもその理由は何??
みんながおかしい理由は??
「知らないふりなんてできないのにね……」
そうだよ、理由はわかってる。
ぼくは外に集まるある場所に目を向けた。
そこにいるのはぼくの部活の仲間達。
そして、囲まれている中の一人にあの人の姿。
「桐山先輩……」
ぼく達空手部の主将だった人。
総体を終えた後、3年生がいなくなった空手部。
最初は不安だったけど、思っていたより大変ではなかった。
そう、思っていたんだ。
だけど、今日を迎えてやっとわかった。
「桐山先輩が近くにいたからなんだ……」
引退したとは言え、同じ学校にいた。
だから何かあってもすぐに桐山先輩に相談できた。
助けてもらえていた。
だけど……。
だけどそれはもうできない。
だって、今日で本当に離れてしまうから。
受け止めなければいけない不安感。
それを目の前に突きつけられるのが嫌で、それでも目の前で見送りたいという気持ちもあって、だからこそ今日のぼく達はいつもと違っていたんだ。
わかっているのに、どうしてもあの中に入っていこうと思えない。
そんな風に思うぼくはおかしいのかな??……。
「あっ、ナルだ」
なんて考えていると、校庭から少し離れた木の陰にいるナルを見つけた。
いつも通り女の子達に囲まれている。
だけど、いつもと違ってその視線は女の子ではない場所に。
バスケ部のもとに。
ああ、ぼくと同じこと考えているんだ。
すぐにわかってしまったそれに、ぼくは苦笑い。
ナルもぼくも、お互いこうして離れた場所からしか見れないんだね。
同じだ。
まるでぼくを客観的に見ているようで、目を閉じようとしたそのとき。
「日向さああぁぁぁん!!、俺達絶対全国行ってやりますからああぁぁぁ!!」
「っ!!?」
外から聞こえたその声は確かにレイのもので、校庭にいる生徒達は一気に屋上のほうへ目を向ける。
それはナルも同様に。
「何やってるのレイ、そんなに注目集めたらすぐに先生にバレる……っ!!」
ナルが笑ってる。
スッキリした表情をして。
ぼくはハッとなって自分の口元に手を当てた。
触れたそこは、嬉しそうに上に上がっている。
ぼくも笑ってる。
レイの言葉がぼくの胸の中に抱えていた思いと同じで、それを大きな声で叫んでくれたから。
「本当に……、男気溢れるレイは違うよね」
クスクス笑いながら、ぼくは屋上の階段から先生と一緒に降りてくるであろうレイを迎えに行くことに。
桐山先輩、ぼくはレイみたいに叫んでないから伝わらないことなんて重々承知です。
でも、あの言葉はぼくの思いと同じです。
それを証明するのは今じゃなくて、もう少し先。
先輩と約束した総体のときに。
