4人からのプレゼントを鞄に入れ、別れたワタシ達はそれぞれの部活へ。

体育館と武道場へ向かう舞璃と蛍と詩音とは階段で別れ、調理部の瑠美とは途中まで一緒で、廊下で別れた。


「こんにちはぁ」


美術室の扉を開き挨拶をすると、中にはすでに数人の部員がいて、ワタシの声に同じように挨拶を返してくれた。

それを受けてからワタシも中へ入り、荷物を降ろして描きかけのキャンバスを目の前に置き、絵の具と筆の準備に取り掛かった。


「杏奈ちゃんもしかして今日誕生日じゃない??」


水を入れて戻って来たところで一人の先輩に声をかけられそんなことを。


「誕生日なの!?、おお、おめでとう!」


それに対して頷くと、美術室にいる部員がみんなそれぞれ手を止めてワタシにお祝いの言葉をくれた。

こんなに大勢の人に一斉にお祝いされることなんて今までなかったから、何だか少し恥ずかしい。

でも、それ以上にすごく嬉しい。


「ありがとうございます!」


だからワタシは大きな声でそう返した。



しばらくお祝いの言葉をもらった後、やっとワタシも描き始めた。

今日完成するこの絵のことをずっと朝から考えていた。

それのラストスパートを描いている。

気付くとまた集中モードに入り、時間も自分の誕生日であることもその他のことも全て頭の中から抜けて、目の前の絵のことだけでいっぱいになった。

だから他の部員の人達がみんなとっくに帰ってしまっていることに気付かなかった。

それから……。


「ふぅ……出来た……」


「お疲れ様」


「えっ……」


やっと完成させることができた絵。

短く息を吐き、小さく完成を喜んでいると、すぐ近くで聞こえたお疲れ様の言葉。

驚いて声がしたほうへと顔を向けると、そこには美術室の電気でキラキラと光る金色。


「後藤先輩!?」


いつからここにいたのか、いつここに来たのか、いつから見られていたのか、全く気付かなかったワタシはすごく驚いて大きな声を上げてしまった。


「驚かせるつもりはなかったけど……驚いた??……」


それに対して先輩は苦笑いを返す。


「驚き……ました……、あっでも嫌とかそういうのじゃなくて!、単純に驚いただけで!」


「はは、うん、わかってる。絵に集中して気付いてないんだろうなぁって思っていたから」


慌てて弁解するワタシに、先輩は笑った後、そんなことを。

ワタシが絵に集中しすぎて周りが見えていないということをこんな風に軽く受け取ってくれる人なんて今まで瑠美達以外いなかった。

簡単に受け取ってくれる先輩のその優しさに、ワタシはまた驚いた。