数日前に降り積もっていた雪はすっかり溶けた。

それでも寒さは引きはせず。

晴れているからまだマシだけど、天気が崩れればいつまた雪が降ってもおかしくない。

雪自体は好きだから構わないけど、さすがに寒すぎるのは絵を描くときに手がかじかむから好きじゃない。

今ちょうど描きかけの絵があって、もうすぐそれが完成する。

そんなときに手がかじかんで筆を置く位置や絵の具の量を間違えたりして失敗してしまうのだけは避けたい。

そんな風に、ワタシの頭の中はすっかり描きかけの絵のことでいっぱいになり、他のことは全く頭になかった。

例えばそう、2月18日の今日がワタシの誕生日であるということも。



絵のことが頭の中にずっとあって、授業の半分以上は右から左。

ノートの上にはいつ描いたのか落書きが。

絵のことになるとそればっかりになって他が疎かになってしまうのは昔から。

だからもうそれは諦めていたんだけど、最近それが昔以上になってしまっている。

ただでさえ他のことに集中できないのに、余計にそうなってしまうと生活に影響が出てしまう。

こんな風に授業聞かないとかね。

でも、いつからこんな風になってしまったのかなぁ??

覚えていないけど、何だかつい最近な気がする……。


「杏奈、ちょっといい??」


ぼーっとそんなことを考えながら帰る用意をしていた放課後。

突然ワタシを呼ぶ声。

振り向くと、ニコリと笑う詩音。


「早く部活に行きたいかもしれないけど、ちょっとだけ時間頂戴」


その隣に両手を合わせてお願いのポーズをする舞璃。


「うん、いいよ!、どうしたの??」


「ここじゃちょっとあれだから、とりあえず教室出ようか」


大きく頷いて答えると、舞璃の隣に立つ蛍がそんな提案を。


「そうだね。それじゃあ杏奈こっち」


それに頷いた瑠美がワタシの荷物を持って誘導してくれる。

よくわからないけど、とりあえずワタシは4人に着いて別の場所へと移った。

扉の前、4人に先に入るようにと促され、ワタシは不思議に思いながらそれに従って扉に手をかけ中へ入った。


「それで何か……えっ??」


中に入り後ろを振り向くと、そこには4人がワタシの正面に横一列なるように並んでいた。

その姿に驚くのも束の間、4人はそれぞれ鞄から何かを取り出してワタシへ差し出して……。


「杏奈誕生日おめでとう!」


そうだ、そういえば今日はワタシの誕生日。

絵のことですっかり忘れていた自分の誕生日。

4人の言葉でようやくそのことに気付いた。


「えへへ、ありがとう!」


受け取った4つのプレゼントを抱きしめ、ワタシはワタシが忘れていた誕生日を祝ってくれた4人にお礼を言った。

4人はその言葉にニッコリと優しい笑みをくれた。