女の子達が不安や緊張、そして胸を踊らせていたバレンタインは無事に終わりを告げた翌日。

昨日積もっていた雪はまだ溶けず、地面の上は一面真っ白な雪景色。

綺麗だとは思うけど、その寒さは異常なほどで、家の玄関を開けた瞬間、そのあまりの寒さに身震いをした。

吐き出した息は白く、まるで煙のようにふわりと空中に浮き、そして消えていく。

寒いのが得意なわけではない私ではあるけれど、今日はそんな寒さも我慢できるほどワクワクと心が浮いている。

それは、2月15日である今日が私、神崎瑠美の誕生日だから。




学校までの道のりは雪で覆われていて、ゆっくり歩かないと転びそうで怖い。

慣れない雪の上にそっと足を下ろし、ゆっくりゆっくりと学校へ向かう。

ようやく校門が見え、何とか来られたと安堵のため息を漏らす。

登校する道のりはあんなに雪があったのに、校門前の雪は左右に避けられている。

そういえば昨日、外の部活の人達が雪掻きをしたんだっけ、と思い出しながら校門を潜った。

校庭だけでも大変なのに、校門前や下駄箱までの道のりまで雪を避けてくれている。


「瑠美ちゃん」


寒い中ありがとうございます、と心の中で外の部活の人達へお礼を言っていると、後ろから私を呼び止める声。

その寒そうな声色ですぐに誰なのか気付いた。


「おはようございます、長坂先輩」


振り向くと、やっぱりそこにいたのは長坂先輩。

ポケットに手を入れ、マフラーに顔を埋めてやっぱり寒そうにしている。

予想通り。

だけど……。


「おはよう……」


その目はものすごく眠たそうで、声にもいつも以上に覇気がない。

朝だからということを差し引いたとしても、あまりにもな姿に私は戸惑った。


「あっ、あのっ……」


「ん??」


「ものすごく眠たそうですけど、大丈夫ですか??」


いったい何をしていたのか、完全に寝不足なことがわかる。


「あー……うん、大丈夫」


でも先輩は何でもないと片手をヒラリと振った。

心配だけど、これ以上掘り下げたところで返答は変わらないと思うから、私は渋々納得することに。


「あのさ、今日もお菓子持って来てくれるよね??」


そんな私に、先輩は突然そんな質問を。

いつも先輩に渡しに行っているのにどうしてわざわざ確認を??

不思議に思ったけれど、私は尋ねることはせず、黙ってそれに頷いた。


「そっか……。それじゃあまた放課後」


「えっ!?、あっ、長坂先輩!」


私の返事を確認すると、先輩はさっさと校舎の中へ。

取り残された私は全く意味がわからなくて、ただただ首を傾げた。