雪が降り積もり、今日はやけに寒いなぁと感じる。
日が落ちてきた夕方、温度は余計に下がり、絵を描く手もかじかむ。
部活も終了時間になり、美術室から一人、また一人と部員が去っていく。
それでもワタシはどうしてもここまでやっちゃいたい、というところがあって、一人キャンバスに筆を走らせ続けた。
そんなとき、ドアのところに誰かがいるような気がして目を向けてみると、そこにはキラキラの金色。
たくさんの荷物を持った後藤先輩。
ワタシはいくつか会話を交わした後、再び筆を走らせて区切りのいいところまで絵を仕上げた。
その後、片付けをするワタシを手伝ってくれていた後藤先輩とまた会話をしていると、ふと先輩がワタシに尋ねた。
“誰かにチョコあげたりした??”と。
その言葉に、ワタシは洗っていた筆を落としそうになった。
そんなワタシの反応に驚いた顔をした後藤先輩は、目を見開いてワタシを見ながら言った。
「誰に、あげたの??」
一言一言をゆっくりと紡いだ先輩。
それはどこか威圧に似た何かみたいで、見ようによっては怒っているようにも見える。
「怒ってるんですか??」
「怒ってないけど……」
率直に尋ねると、食い気味で答えられた。
何だかわからないけど、後藤先輩怒ってるみたい。
「それで、誰にあげたの??」
どうしてなのかわからなくて考えるワタシに、後藤先輩は同じ質問をぶつける。
「誰にもあげていません」
怒らせた理由がわからないから、とりあえず素直に返事をしようと思い、ワタシは先輩からの質問に答えた。
「えっ??……、じゃあさっきの驚いた顔は??」
すると、素っ頓狂な声を出した先輩は、別の質問をした。
いつの間にかさっきまでの怒っている雰囲気は無くなっていて、今日の先輩はいったいどうしたのかと首を傾げながらまた素直に返事をした。
「今日ってバレンタインデーだったんですね」
「はい??」
「??、だから、今日ってバレンタインデーだったんですね、忘れてました」
「えっと……、それじゃあさっきの驚いた顔って、今日がバレンタインデーだということに対して……っていうこと??……」
「はい」
笑顔で返事をすると、後藤先輩は大きなため息を吐きながら机に寄りかかった。
「先輩が荷物たくさんだったのは、バレンタインだからだったんですね」
「ああ、うん……、ソダネ」
先輩人気者ですね、と言うワタシに、先輩は気のない返事をする。
人気者なのは嬉しいことのはずなのに、どうして元気ないのかなぁ??
「あっそうだ!」
ワタシは後藤先輩がどうにか元気にならないかと思考を巡らせある事を思い付いた。
そして先輩が不思議そうにワタシを見ている中、ワタシは紙にペンを走らせた。
そしておよそ5分後。
「後藤先輩、これどうぞ!」
未だに机に寄りかかる先輩へワタシは一枚の紙を差し出す。
先輩は不思議そうにしながらそれを受け取り、紙の上に目を落とした。
そこにはワタシが描いた絵。
「トナミちゃんこれは??……」
「ハッピーバレンタインデー!です!」
笑ってそう伝えれば、一瞬ものすごく驚いた顔をした先輩が、次の瞬間には噴き出して笑い出した。
何がそんなにツボにハマったのかはわからないけど、先輩が元気になってよかった。
そう思い、ワタシも同じように笑った。
部活終了後、libertyの部室に集まったボク達だったけど、今日はいつもより早く部室を出て帰ることに。
ボクや玲斗は自転車とバイクがあるからまだしも、後の三人は歩きだから、手に持たなければいけない大荷物達が重そうだ。
何となくわかっていたけど、玲斗とのバレンタインチョコ獲得数対決はボクの負け。
今思えばホントに何てしょうもない対決だったんだろうかと思う。
でも、こうして対決をすることになって、バレンタインデーということを意識したからこそ受け取ることのできた戦利品もある。
「これまた可愛らしい絵を描いてくれたものだ……、こんなのも描けるんだね……」
そう呟いてさっき見た絵をもう一度広げて見てみる。
背中合わせになった男女、女の子の手にはハートの形をした箱。
ピンクや赤で柔らかく描かれたそのイラストは、バレンタイン仕様。
いつものタッチとは違う、ふわふわとしたメルヘンチックな絵。
これを男であるボクに持たせたこともおかしいけど、それより、バレンタインデーに絵をプレゼントされたことがおかしくて、自然と笑みが浮かぶ。
女の子なら誰でも覚えているはずの日。
なのにトナミちゃんは忘れていたと言った。
あのとき、あの驚き顔が本命を誰かにあげたからではないということに心底安心した。
力が抜けて机に寄りかかってしまうほどに。
たぶんトナミちゃんはボクが元気がないと思ってこの絵を描いてプレゼントしてくれたんだろう。
でもそこで絵をプレゼントしてくるなんて、トナミちゃんのそのセンスに笑いが込み上げる。
バカにしているんじゃない。
嬉しかったんだ。
今日はたくさんバレンタインチョコをもらった。
中にはすごく高いやつや、ボクの好きな味のものもある。
だけどそれよりも、ボクはトナミちゃんからの絵のプレゼントのほうが嬉しいんだ。
だって、ボクが好きなのはチョコよりトナミちゃんの絵だから。
日が落ちてきた夕方、温度は余計に下がり、絵を描く手もかじかむ。
部活も終了時間になり、美術室から一人、また一人と部員が去っていく。
それでもワタシはどうしてもここまでやっちゃいたい、というところがあって、一人キャンバスに筆を走らせ続けた。
そんなとき、ドアのところに誰かがいるような気がして目を向けてみると、そこにはキラキラの金色。
たくさんの荷物を持った後藤先輩。
ワタシはいくつか会話を交わした後、再び筆を走らせて区切りのいいところまで絵を仕上げた。
その後、片付けをするワタシを手伝ってくれていた後藤先輩とまた会話をしていると、ふと先輩がワタシに尋ねた。
“誰かにチョコあげたりした??”と。
その言葉に、ワタシは洗っていた筆を落としそうになった。
そんなワタシの反応に驚いた顔をした後藤先輩は、目を見開いてワタシを見ながら言った。
「誰に、あげたの??」
一言一言をゆっくりと紡いだ先輩。
それはどこか威圧に似た何かみたいで、見ようによっては怒っているようにも見える。
「怒ってるんですか??」
「怒ってないけど……」
率直に尋ねると、食い気味で答えられた。
何だかわからないけど、後藤先輩怒ってるみたい。
「それで、誰にあげたの??」
どうしてなのかわからなくて考えるワタシに、後藤先輩は同じ質問をぶつける。
「誰にもあげていません」
怒らせた理由がわからないから、とりあえず素直に返事をしようと思い、ワタシは先輩からの質問に答えた。
「えっ??……、じゃあさっきの驚いた顔は??」
すると、素っ頓狂な声を出した先輩は、別の質問をした。
いつの間にかさっきまでの怒っている雰囲気は無くなっていて、今日の先輩はいったいどうしたのかと首を傾げながらまた素直に返事をした。
「今日ってバレンタインデーだったんですね」
「はい??」
「??、だから、今日ってバレンタインデーだったんですね、忘れてました」
「えっと……、それじゃあさっきの驚いた顔って、今日がバレンタインデーだということに対して……っていうこと??……」
「はい」
笑顔で返事をすると、後藤先輩は大きなため息を吐きながら机に寄りかかった。
「先輩が荷物たくさんだったのは、バレンタインだからだったんですね」
「ああ、うん……、ソダネ」
先輩人気者ですね、と言うワタシに、先輩は気のない返事をする。
人気者なのは嬉しいことのはずなのに、どうして元気ないのかなぁ??
「あっそうだ!」
ワタシは後藤先輩がどうにか元気にならないかと思考を巡らせある事を思い付いた。
そして先輩が不思議そうにワタシを見ている中、ワタシは紙にペンを走らせた。
そしておよそ5分後。
「後藤先輩、これどうぞ!」
未だに机に寄りかかる先輩へワタシは一枚の紙を差し出す。
先輩は不思議そうにしながらそれを受け取り、紙の上に目を落とした。
そこにはワタシが描いた絵。
「トナミちゃんこれは??……」
「ハッピーバレンタインデー!です!」
笑ってそう伝えれば、一瞬ものすごく驚いた顔をした先輩が、次の瞬間には噴き出して笑い出した。
何がそんなにツボにハマったのかはわからないけど、先輩が元気になってよかった。
そう思い、ワタシも同じように笑った。
部活終了後、libertyの部室に集まったボク達だったけど、今日はいつもより早く部室を出て帰ることに。
ボクや玲斗は自転車とバイクがあるからまだしも、後の三人は歩きだから、手に持たなければいけない大荷物達が重そうだ。
何となくわかっていたけど、玲斗とのバレンタインチョコ獲得数対決はボクの負け。
今思えばホントに何てしょうもない対決だったんだろうかと思う。
でも、こうして対決をすることになって、バレンタインデーということを意識したからこそ受け取ることのできた戦利品もある。
「これまた可愛らしい絵を描いてくれたものだ……、こんなのも描けるんだね……」
そう呟いてさっき見た絵をもう一度広げて見てみる。
背中合わせになった男女、女の子の手にはハートの形をした箱。
ピンクや赤で柔らかく描かれたそのイラストは、バレンタイン仕様。
いつものタッチとは違う、ふわふわとしたメルヘンチックな絵。
これを男であるボクに持たせたこともおかしいけど、それより、バレンタインデーに絵をプレゼントされたことがおかしくて、自然と笑みが浮かぶ。
女の子なら誰でも覚えているはずの日。
なのにトナミちゃんは忘れていたと言った。
あのとき、あの驚き顔が本命を誰かにあげたからではないということに心底安心した。
力が抜けて机に寄りかかってしまうほどに。
たぶんトナミちゃんはボクが元気がないと思ってこの絵を描いてプレゼントしてくれたんだろう。
でもそこで絵をプレゼントしてくるなんて、トナミちゃんのそのセンスに笑いが込み上げる。
バカにしているんじゃない。
嬉しかったんだ。
今日はたくさんバレンタインチョコをもらった。
中にはすごく高いやつや、ボクの好きな味のものもある。
だけどそれよりも、ボクはトナミちゃんからの絵のプレゼントのほうが嬉しいんだ。
だって、ボクが好きなのはチョコよりトナミちゃんの絵だから。
