バスケ部が終わりlibertyの部室に入る。
外は雪で廊下はものすごく寒かったけど、この部室はめちゃくちゃ暖かい。
その暖かさにホッとするのも束の間、俺はすぐに鳴り響いた携帯を耳に当てた。
相手はクラスの違う女の子。
明日のバレンタインデー何が欲しい??、というような内容。
「君から貰えるならどんなものでも嬉しいよ〜」
お決まりのセリフを言って電話を切った後、メールやSNSで届いた同じような言葉に俺もまた同じように返す。
バレンタインは俺みたいな男にとっては最大のイベントといっても過言ではない。
お菓子が欲しいとかそういうのより、とにかくその数が男の勲章、みたいなね〜。
「上等じゃねーか!、お前には負けねー!」
「ボクだって負けないよ!」
女の子達と会話をしながら何となく耳を傾けていた二人の会話はヒートアップし、いつの間にかいがみ合いになっていた。
バカだよね〜。
窓際で玲斗とセツ子の姿を見て呆然とするりょうに近付き、俺は笑いながら説明をしてやる。
「二人ってナルと違ってチョコ欲しがるタイプじゃないよね??」
すると天然らしく確実に俺にグサリと突き刺さる言葉を言う。
“ナルと違って”なんて酷い……。
まあ間違えてはないからここはスルーしてあげるけど……。
「そうなんだけどね、な〜んか勝負事になるとどっちも引かないから売り言葉に買い言葉的な??、そんな感じで勝負するみたいだね〜」
「正直チョコとかどうでもよくて、勝負したいだけなんでしょ」
首を傾げるりょうに説明をしてやっていると、面倒くさそうな声。
振り向くと、耳を押さえて避難してきた奏ちゃん。
「カナデはものすごく嫌そうな顔だね」
「チョコとか別に欲しくないしね、荷物増えるだけだから」
「バカだな〜奏ちゃん、バレンタインなんて貰ってなんぼでしょ〜」
りょうの言葉に頷き明らかに舌打ちをしそうな勢いの奏ちゃん。
俺はそれに対しアメリカ人さながらに肩を竦めて見せた。
奏ちゃんは煩わしそうに目線を外に向ける。
まあ、奏ちゃんにとっては明日は地獄かもね。
俺にとっては天国だけどね〜。
翌日、昨日降っていた雪は積もり、路上は真っ白。
転ぶなんてかっこわるい姿を見せるわけにはいかないから、細心の注意を払って学校へ向かう。
「松岡君!食べたいって言っていたトリュフ」
「成海君、私からはクッキー」
「松岡先輩!」
校門を入った瞬間、ワッと一斉に集まってくれる女の子達。
手には俺に渡すための可愛いラッピングが施されたバレンタインプレゼント。
そうそう、これこれ。
やっぱりバレンタインは貰ってなんぼでしょ。
「みんな俺のためにありがと」
ウィンクをしながらお礼を言って、俺は渡されたものを全部受け取る。
教室に入った後も女の子達が次々に俺のもとへやってくる。
顔を真っ赤にして本命をくれる子もたくさんいて、やっぱりモテる男は辛いよね〜、なんて。
横目で辺りを見渡すと、同じように女の子達が集まる四つの場所。
確実にあそこにlibertyの四人がいるだろう。
今日会話できるのは放課後部室に集まったときになりそうだね。
放課後、初会話を玲斗と交わしながらバスケ部へ。
いつもはこんなにいないはずのギャラリーが今日は多い。
しかもみんな女の子。
むさ苦しい男より女の子の比率が高いなんて最高だね。
俺を呼ぶ声に笑顔で手を振り、バレンタインデー万歳、なんて思った。
いつもは無視するであろう玲斗も、今日はセツ子との勝負のためか笑顔で手を振っている。
それに対し女の子達は黄色い声を上げる。
ちょっとちょっと、いくら玲斗といえど、俺の女の子達は譲らないよ〜??
負けじと俺もウィンクをして黄色い歓声を上げさせる。
玲斗とセツ子の勝負に俺は興味ないけど、貰ってなんぼの俺からすれば、二人に負けるのも何だか癪だよね〜。
雪は全く溶けていなくて、外はすごく寒そう。
部活終わりのミーティング、マネから貰ったチョコを手に着替えに行く。
着替えている途中、俺はふと一人の女の子の顔が浮かぶ。
そういえば、俺マネからのやつは他のマネに貰ってあの子からは貰ってない。
そう思った瞬間、俺はさっさと制服に着替え、あの子を探しに向かった。
「マイスウィートハニー蛍ちゃ〜ん!!」
「まっ、松岡先輩!?」
部活終わってすぐのため、簡単に見つけることができた。
そう、俺が探していたのは蛍ちゃん。
俺の登場に蛍ちゃんは驚いて戸惑っている。
「蛍ちゃん、俺に何か渡すものな〜い??」
ニコリと笑って手を出しながら俺はそう言った。
俺の自意識過剰とかじゃなく、バスケ部の中では蛍ちゃんと一番仲が良いのは俺。
クリスマスとかも一緒に過ごしたりしたし、むしろバスケ部だけじゃなく、男の中では俺が一番仲が良いんじゃないかな??
だから蛍ちゃんならきっと俺に義理でもチョコを用意してくれてるんじゃないかと思う。
「ありませんけど」
でも、蛍ちゃんはバッサリとそう言い捨てた。
「えっ、今日バレンタインだよ??」
「知ってますよ、さっきマネから部員へ渡しましたからね」
いつもは戸惑いながら“ありません”と言うからツンデレだから照れてるんだとわかる。
でもこれは違う。
ツンデレとかじゃない。
完全に俺へのバレンタインなんて無いっていう顔だ。
「もういいですか??」
迷惑そうに歪む蛍ちゃんの顔。
俺はやっぱり自意識過剰だったみたいだ。
仲良いからくれるんじゃないかと思った。
いや、期待してた。
でも実際はそんなこと全然なくて……。
思い上がっていた。
それでも、いつもならヘラヘラ笑って“え〜酷くな〜い、じゃあ来年は頂戴ね”って軽く約束交わせるのに。
別に一個くらい何てことないって思えるのに。
なのに……。
「俺、結構ショックだよ」
この子の一個がどうしても欲しいと思ってしまうんだ。
外は雪で廊下はものすごく寒かったけど、この部室はめちゃくちゃ暖かい。
その暖かさにホッとするのも束の間、俺はすぐに鳴り響いた携帯を耳に当てた。
相手はクラスの違う女の子。
明日のバレンタインデー何が欲しい??、というような内容。
「君から貰えるならどんなものでも嬉しいよ〜」
お決まりのセリフを言って電話を切った後、メールやSNSで届いた同じような言葉に俺もまた同じように返す。
バレンタインは俺みたいな男にとっては最大のイベントといっても過言ではない。
お菓子が欲しいとかそういうのより、とにかくその数が男の勲章、みたいなね〜。
「上等じゃねーか!、お前には負けねー!」
「ボクだって負けないよ!」
女の子達と会話をしながら何となく耳を傾けていた二人の会話はヒートアップし、いつの間にかいがみ合いになっていた。
バカだよね〜。
窓際で玲斗とセツ子の姿を見て呆然とするりょうに近付き、俺は笑いながら説明をしてやる。
「二人ってナルと違ってチョコ欲しがるタイプじゃないよね??」
すると天然らしく確実に俺にグサリと突き刺さる言葉を言う。
“ナルと違って”なんて酷い……。
まあ間違えてはないからここはスルーしてあげるけど……。
「そうなんだけどね、な〜んか勝負事になるとどっちも引かないから売り言葉に買い言葉的な??、そんな感じで勝負するみたいだね〜」
「正直チョコとかどうでもよくて、勝負したいだけなんでしょ」
首を傾げるりょうに説明をしてやっていると、面倒くさそうな声。
振り向くと、耳を押さえて避難してきた奏ちゃん。
「カナデはものすごく嫌そうな顔だね」
「チョコとか別に欲しくないしね、荷物増えるだけだから」
「バカだな〜奏ちゃん、バレンタインなんて貰ってなんぼでしょ〜」
りょうの言葉に頷き明らかに舌打ちをしそうな勢いの奏ちゃん。
俺はそれに対しアメリカ人さながらに肩を竦めて見せた。
奏ちゃんは煩わしそうに目線を外に向ける。
まあ、奏ちゃんにとっては明日は地獄かもね。
俺にとっては天国だけどね〜。
翌日、昨日降っていた雪は積もり、路上は真っ白。
転ぶなんてかっこわるい姿を見せるわけにはいかないから、細心の注意を払って学校へ向かう。
「松岡君!食べたいって言っていたトリュフ」
「成海君、私からはクッキー」
「松岡先輩!」
校門を入った瞬間、ワッと一斉に集まってくれる女の子達。
手には俺に渡すための可愛いラッピングが施されたバレンタインプレゼント。
そうそう、これこれ。
やっぱりバレンタインは貰ってなんぼでしょ。
「みんな俺のためにありがと」
ウィンクをしながらお礼を言って、俺は渡されたものを全部受け取る。
教室に入った後も女の子達が次々に俺のもとへやってくる。
顔を真っ赤にして本命をくれる子もたくさんいて、やっぱりモテる男は辛いよね〜、なんて。
横目で辺りを見渡すと、同じように女の子達が集まる四つの場所。
確実にあそこにlibertyの四人がいるだろう。
今日会話できるのは放課後部室に集まったときになりそうだね。
放課後、初会話を玲斗と交わしながらバスケ部へ。
いつもはこんなにいないはずのギャラリーが今日は多い。
しかもみんな女の子。
むさ苦しい男より女の子の比率が高いなんて最高だね。
俺を呼ぶ声に笑顔で手を振り、バレンタインデー万歳、なんて思った。
いつもは無視するであろう玲斗も、今日はセツ子との勝負のためか笑顔で手を振っている。
それに対し女の子達は黄色い声を上げる。
ちょっとちょっと、いくら玲斗といえど、俺の女の子達は譲らないよ〜??
負けじと俺もウィンクをして黄色い歓声を上げさせる。
玲斗とセツ子の勝負に俺は興味ないけど、貰ってなんぼの俺からすれば、二人に負けるのも何だか癪だよね〜。
雪は全く溶けていなくて、外はすごく寒そう。
部活終わりのミーティング、マネから貰ったチョコを手に着替えに行く。
着替えている途中、俺はふと一人の女の子の顔が浮かぶ。
そういえば、俺マネからのやつは他のマネに貰ってあの子からは貰ってない。
そう思った瞬間、俺はさっさと制服に着替え、あの子を探しに向かった。
「マイスウィートハニー蛍ちゃ〜ん!!」
「まっ、松岡先輩!?」
部活終わってすぐのため、簡単に見つけることができた。
そう、俺が探していたのは蛍ちゃん。
俺の登場に蛍ちゃんは驚いて戸惑っている。
「蛍ちゃん、俺に何か渡すものな〜い??」
ニコリと笑って手を出しながら俺はそう言った。
俺の自意識過剰とかじゃなく、バスケ部の中では蛍ちゃんと一番仲が良いのは俺。
クリスマスとかも一緒に過ごしたりしたし、むしろバスケ部だけじゃなく、男の中では俺が一番仲が良いんじゃないかな??
だから蛍ちゃんならきっと俺に義理でもチョコを用意してくれてるんじゃないかと思う。
「ありませんけど」
でも、蛍ちゃんはバッサリとそう言い捨てた。
「えっ、今日バレンタインだよ??」
「知ってますよ、さっきマネから部員へ渡しましたからね」
いつもは戸惑いながら“ありません”と言うからツンデレだから照れてるんだとわかる。
でもこれは違う。
ツンデレとかじゃない。
完全に俺へのバレンタインなんて無いっていう顔だ。
「もういいですか??」
迷惑そうに歪む蛍ちゃんの顔。
俺はやっぱり自意識過剰だったみたいだ。
仲良いからくれるんじゃないかと思った。
いや、期待してた。
でも実際はそんなこと全然なくて……。
思い上がっていた。
それでも、いつもならヘラヘラ笑って“え〜酷くな〜い、じゃあ来年は頂戴ね”って軽く約束交わせるのに。
別に一個くらい何てことないって思えるのに。
なのに……。
「俺、結構ショックだよ」
この子の一個がどうしても欲しいと思ってしまうんだ。