いつものように部活終わり、libertyの部室に集まった。
それぞれ好きなことをする中、俺は和歌の本を読んでいた。
窓の外では雪が降り、見るだけ寒そうだから視界に入らないようにと本から目を逸らさずにいた。
部室に響く声は女と電話をするナルの声と、何か話をしている玲斗と瀬那の声。
いつも通りのため全く気にすることなく俺は本を読み進めていた。
「上等じゃねーか!、お前には負けねー!」
「ボクだって負けないよ!」
なのに、突然聞こえたバンッと何かを叩いたような音とそれと共に始まったいがみ合う声。
さすがの煩さに俺は顔をしかめる。
どうしたものかと思っていると、いつの間に避難したのか、窓の近くにリョウとナル。
窓際は寒いから嫌だけど、今は仕方ない、そう思い、耳を塞ぎながら二人のもとへ俺も避難した。
「二人ってナルと違ってチョコ欲しがるタイプじゃないよね??」
「そうなんだけどね、な〜んか勝負事になるとどっちも引かないから売り言葉に買い言葉的な??、そんな感じで勝負するみたいだね〜」
「正直チョコとかどうでもよくて、勝負したいだけなんでしょ」
二人に近付くと聞こえた会話。
なるほど、バレンタインチョコについて玲斗と瀬那はいがみ合っていたのか。
でも正直二人はヒマだから勝負した、というようにしか見えないよね。
いつもは覚えていないけど、今年は明日がバレンタインデーだということは知っていた。
県外にいる兄さんに母さんがチョコを送ると言っていたからね。
でも正直バレンタインデーなんて……。
「カナデはものすごく嫌そうな顔だね」
クスクス笑いながらリョウにそう言い当てられた。
「チョコとか別に欲しくないしね、荷物増えるだけだから」
「バカだな〜奏ちゃん、バレンタインなんて貰ってなんぼでしょ〜」
隠す理由もないため正直にリョウの言葉に頷くと、ナルが明らさまに肩を竦めて見せてきた。
そりゃあ女好きのナルにとっては最高のイベントかもしれないけど、俺にとっては全く逆。
面倒で仕方がない。
いっそ今降っている雪がめちゃくちゃ積もって明日登校できなくなればいいのに。
翌日、俺の願い虚しく登校。
雪は積もってはいるものの、登校禁止とまではならなかったみたい。
去年のバレンタインで学習した俺は、今年はいつもより1本早い電車での登校。
去年は降りたホームで囲まれて大変だったからね。
今年はこれで大丈夫でしょ。
そう思ったのも束の間。
校門を潜った瞬間、一斉に知らない女が走ってくるのが見えた。
「朝から走るとか勘弁なんだけど……」
ため息を漏らしながら、それでも囲まれるほうが面倒だと俺は走り出した。
「長坂君!待ってー!」
「奏くーん!受け取ってよー!」
「長坂先輩!」
遠くで呼び止める声が聞こえるのを無視し、鬼ごっこさながらに俺は走る。
「嘘でしょ……」
下駄箱に着き、靴を履き変えようとすると、俺の下駄箱に詰め込まれているお菓子達。
「直接渡したら逃げられちゃうからここに入れておきます」
そう書かれた紙までご丁寧に貼られて。
これじゃチョコ受け取らなきゃ下駄箱使えないじゃん。
どうやら去年のことを学習したのは俺だけじゃないみたい。
教室に着き自分の席へ向かうと、机の中や上も下駄箱と同じ状態。
呆然としながら項垂れるように席に着くと、それを見計らったように集まってきた女達。
どう逃げようかと辺りを見渡すと、libertyの四人もそれぞれ囲まれている。
女の数が多すぎて、逃げるに逃げられないことは明白。
何もかも面倒になり、俺は机にうつ伏せになって無視を決め込むことに。
おい、勝手に紙袋に詰めていくな。
放課後、捕まらないようにさっさと教室を出る。
「えっ、雪掻き??」
陸上部に向かい、これで安心だと思っている俺に、ハル君が今日は部活停止で雪掻きを行うことを伝えた。
なんて面倒なんだ、しかも寒いし。
「長坂、お前がちゃんと受け取るなんて意外だな」
本日何度目かのため息をついていると、俺の荷物を見たハル君がそんなことを言った。
「俺だって欲しくて持ってるわけじゃない。勝手に置いて行かれたんだよ、しかも受け取らないと下駄箱も机も使えない状態にされて」
投げ捨ててやろうかと思うくらい重たいし邪魔なそれについて説明する。
「それにしても市販のものばかりだな」
「どうせ貰わなきゃいけないなら手作りなんて食べれるわけないでしょ、何が入ってるのかわからないのに。だから市販のものしか受け取らないって去年言ったからね」
まあ、そう言うことで俺に腹を立てたやつ達はもう来年は俺にチョコを渡してこないと思って言ったというところもあるんだけどね。
なのになぜこうなったのか、忠実に市販のものを渡してきた。
しかも去年のことを知らないはずの後輩達もどこで聞いたのか市販のものを渡してきた。
「なるほど、勘違いされないといいな」
面倒くさいと言う俺に、ハル君はそんな意味不明なことを言ってさっさと雪掻きに行ってしまった。
もちろん雪掻きなんて面倒なことやる気ゼロの俺は絶賛サボり中。
「こんなにどうやって処理しろっていうの……」
いくつもの紙袋を前に、俺は舌打ちをする。
でも全部市販のものというのがまだ救いか。
いや、全部かどうかは見ていないから知らないんだけど、上から見えている分には全部市販のものだ。
奥の方もそうなのかな、そう思い、俺はガサガサと紙袋の中を漁ってテキトーな一つを引き抜く。
「これも市販のものだ、よかった」
上手いと思って作る勘違いのやつとかいるし、手作りなんて何が入れられているのかわからないからね。
何度か同じことを繰り返し、どうやら全部市販のものだと確信し始めたとき、これで最後にしようともう一度紙袋を漁ってテキトーな一つを引き抜くと……。
「おー、これも市販の……っ!!?」
そこには小さなメモ用紙に書かれた手紙が貼られていた。
「よければ受け取ってください、無理にとは言いませんから、嫌なら捨ててくださって結構です」
その字に俺は見覚えがある。
それに、こういう言葉を書けるのは……。
「何でだよっ……」
俺はそのチョコだけを手に走り出した。
どうして市販のものなんか……。
どうして他のやつに紛れ込ませて……。
どうして……。
瑠美ちゃん。
それぞれ好きなことをする中、俺は和歌の本を読んでいた。
窓の外では雪が降り、見るだけ寒そうだから視界に入らないようにと本から目を逸らさずにいた。
部室に響く声は女と電話をするナルの声と、何か話をしている玲斗と瀬那の声。
いつも通りのため全く気にすることなく俺は本を読み進めていた。
「上等じゃねーか!、お前には負けねー!」
「ボクだって負けないよ!」
なのに、突然聞こえたバンッと何かを叩いたような音とそれと共に始まったいがみ合う声。
さすがの煩さに俺は顔をしかめる。
どうしたものかと思っていると、いつの間に避難したのか、窓の近くにリョウとナル。
窓際は寒いから嫌だけど、今は仕方ない、そう思い、耳を塞ぎながら二人のもとへ俺も避難した。
「二人ってナルと違ってチョコ欲しがるタイプじゃないよね??」
「そうなんだけどね、な〜んか勝負事になるとどっちも引かないから売り言葉に買い言葉的な??、そんな感じで勝負するみたいだね〜」
「正直チョコとかどうでもよくて、勝負したいだけなんでしょ」
二人に近付くと聞こえた会話。
なるほど、バレンタインチョコについて玲斗と瀬那はいがみ合っていたのか。
でも正直二人はヒマだから勝負した、というようにしか見えないよね。
いつもは覚えていないけど、今年は明日がバレンタインデーだということは知っていた。
県外にいる兄さんに母さんがチョコを送ると言っていたからね。
でも正直バレンタインデーなんて……。
「カナデはものすごく嫌そうな顔だね」
クスクス笑いながらリョウにそう言い当てられた。
「チョコとか別に欲しくないしね、荷物増えるだけだから」
「バカだな〜奏ちゃん、バレンタインなんて貰ってなんぼでしょ〜」
隠す理由もないため正直にリョウの言葉に頷くと、ナルが明らさまに肩を竦めて見せてきた。
そりゃあ女好きのナルにとっては最高のイベントかもしれないけど、俺にとっては全く逆。
面倒で仕方がない。
いっそ今降っている雪がめちゃくちゃ積もって明日登校できなくなればいいのに。
翌日、俺の願い虚しく登校。
雪は積もってはいるものの、登校禁止とまではならなかったみたい。
去年のバレンタインで学習した俺は、今年はいつもより1本早い電車での登校。
去年は降りたホームで囲まれて大変だったからね。
今年はこれで大丈夫でしょ。
そう思ったのも束の間。
校門を潜った瞬間、一斉に知らない女が走ってくるのが見えた。
「朝から走るとか勘弁なんだけど……」
ため息を漏らしながら、それでも囲まれるほうが面倒だと俺は走り出した。
「長坂君!待ってー!」
「奏くーん!受け取ってよー!」
「長坂先輩!」
遠くで呼び止める声が聞こえるのを無視し、鬼ごっこさながらに俺は走る。
「嘘でしょ……」
下駄箱に着き、靴を履き変えようとすると、俺の下駄箱に詰め込まれているお菓子達。
「直接渡したら逃げられちゃうからここに入れておきます」
そう書かれた紙までご丁寧に貼られて。
これじゃチョコ受け取らなきゃ下駄箱使えないじゃん。
どうやら去年のことを学習したのは俺だけじゃないみたい。
教室に着き自分の席へ向かうと、机の中や上も下駄箱と同じ状態。
呆然としながら項垂れるように席に着くと、それを見計らったように集まってきた女達。
どう逃げようかと辺りを見渡すと、libertyの四人もそれぞれ囲まれている。
女の数が多すぎて、逃げるに逃げられないことは明白。
何もかも面倒になり、俺は机にうつ伏せになって無視を決め込むことに。
おい、勝手に紙袋に詰めていくな。
放課後、捕まらないようにさっさと教室を出る。
「えっ、雪掻き??」
陸上部に向かい、これで安心だと思っている俺に、ハル君が今日は部活停止で雪掻きを行うことを伝えた。
なんて面倒なんだ、しかも寒いし。
「長坂、お前がちゃんと受け取るなんて意外だな」
本日何度目かのため息をついていると、俺の荷物を見たハル君がそんなことを言った。
「俺だって欲しくて持ってるわけじゃない。勝手に置いて行かれたんだよ、しかも受け取らないと下駄箱も机も使えない状態にされて」
投げ捨ててやろうかと思うくらい重たいし邪魔なそれについて説明する。
「それにしても市販のものばかりだな」
「どうせ貰わなきゃいけないなら手作りなんて食べれるわけないでしょ、何が入ってるのかわからないのに。だから市販のものしか受け取らないって去年言ったからね」
まあ、そう言うことで俺に腹を立てたやつ達はもう来年は俺にチョコを渡してこないと思って言ったというところもあるんだけどね。
なのになぜこうなったのか、忠実に市販のものを渡してきた。
しかも去年のことを知らないはずの後輩達もどこで聞いたのか市販のものを渡してきた。
「なるほど、勘違いされないといいな」
面倒くさいと言う俺に、ハル君はそんな意味不明なことを言ってさっさと雪掻きに行ってしまった。
もちろん雪掻きなんて面倒なことやる気ゼロの俺は絶賛サボり中。
「こんなにどうやって処理しろっていうの……」
いくつもの紙袋を前に、俺は舌打ちをする。
でも全部市販のものというのがまだ救いか。
いや、全部かどうかは見ていないから知らないんだけど、上から見えている分には全部市販のものだ。
奥の方もそうなのかな、そう思い、俺はガサガサと紙袋の中を漁ってテキトーな一つを引き抜く。
「これも市販のものだ、よかった」
上手いと思って作る勘違いのやつとかいるし、手作りなんて何が入れられているのかわからないからね。
何度か同じことを繰り返し、どうやら全部市販のものだと確信し始めたとき、これで最後にしようともう一度紙袋を漁ってテキトーな一つを引き抜くと……。
「おー、これも市販の……っ!!?」
そこには小さなメモ用紙に書かれた手紙が貼られていた。
「よければ受け取ってください、無理にとは言いませんから、嫌なら捨ててくださって結構です」
その字に俺は見覚えがある。
それに、こういう言葉を書けるのは……。
「何でだよっ……」
俺はそのチョコだけを手に走り出した。
どうして市販のものなんか……。
どうして他のやつに紛れ込ませて……。
どうして……。
瑠美ちゃん。
