そしていよいよ待ちに待った桜祭り当日。


「腹へったー!!」


「瀬那、黙ってシート敷きなよ」


自分の欲に忠実に叫んだセツ子の背中をブルーシートで2回叩いた奏ちゃん。


「レイ、それ出して」


「ちょい待ってりょーすけ、風で飛んでいく」


飲み物を袋から取り出して紙コップを用意するよう伝えたりょうに、風で何も入っていない紙コップが飛んでいきそうになるのを食い止める玲斗。


「いや~春っていいねぇ~」


「お前も手伝え!」


俺の頭を落ちてた木の枝で叩いた玲斗。
ちょっと、これマジで痛いから!
せめて手加減してよ!




花見の準備が整い、ブルーシートの上に円状に座った俺達。


「それじゃあ開けるよ??」


「せーのっ」と言い蓋を開けようとした瞬間、聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。
そうだ、この声は……。


「マイスウィートハニー蛍ちゃ~ん!」


「うわっ!」


遠ざかろうとしていた蛍ちゃんの背中へそう言い追いかけると、心底嫌そうな顔をした。


「蛍ちゃん達も花見??みんな蛍ちゃんのお友達かな??」


俺がそう聞くと、セツ子達から多分目の前の女の子達の名前であろう言葉が聞こえた。


「トナミちゃんじゃん!」


「キラキラせんっ………後藤先輩」


「あれ??一瞬名前忘れられてた!?」


キラキラせん??
よくわからないけど、フワフワした髪と雰囲気の女の子はセツ子が前に言っていた美術部の砺波杏奈ちゃんらしい。


「やほー伊吹」


「岡本先輩!こんにちは!昨日の怪我大丈夫でしたか??」


「おぉ、軽い打撲でちょっと青くなってるだけ」


オレンジ色に近い茶色の髪をした伊吹舞璃ちゃんはバスケ部のマネージャーだから俺とも面識がある。
ちなみに今2人が話していた内容は、バスケのゲームの時、押されて転んだ玲斗が左腕を打ち怪我をしてしまったことについてだ。


「小早川さん何だか久しぶりだね」


「お久しぶりです」


「中学からの友達ってこの子達のことだったんだね」


ショートの黒髪を持つこの子はりょうが図書室で出会った小早川詩音ちゃんという子らしい。
少し緊張したように返事をする詩音ちゃんは何だか初々しく、それを見ているりょうも優しく微笑んでいる。
何だかほのぼのしているな、この2人。


「瑠美ちゃん、この間はありがとう。プリン美味しかったよ」


「あっありがとうございますっ……約束でしたし……」


「引き続きこれからもよろしくお願いします」


ミディアムの黒髪にカチューシャを付けて、奏ちゃんと喋っている子は神崎瑠美ちゃんといい、この間奏ちゃんが持って帰ってきたクッキーを作った子らしい。
女の子に営業スマイルせずに自然に笑っている奏ちゃんは珍しい。
瑠美ちゃんはそんな奏ちゃんとは打って変わって顔を赤くして下を向き照れているようだ。