「綺麗なお姉さん、俺と一杯どう⁇」


「あっ、こいつのこと無視してくれていいんで」


ようやく鳥居を潜ったボク達は、まず甘酒が置いてある場所に向かった。

そして着くや否やナルさんのお決まり行事である“女性への声掛け”がまたいつものように始まった。

レイはそんなナルさんを冷たく遮り甘酒を受け取っている。


「まあまあナル落ち着いて、ほら甘酒飲もうよ」


“玲斗酷い”と言って泣いたフリをするナルみんを見かねて、リョウキチはお姉さんから受け取った甘酒を渡してあげている。


「はい、カナデの分」


「あったかい……、もう少しで死ぬとこだったよ」


ポケットから手を出そうとしないカナデに甘酒を渡してあげると、ようやく手を出した。

するとボクから受け取った甘酒を見つめ、真剣な顔でそんなことを言った。

夏は暑くて死ぬカナデは、冬は寒くて死ぬらしい。

ボクはカナデの言葉に苦笑いを返すことしかできない。


「甘酒ってこんなに甘かったっけ⁇」


「りょーすけ口に合わねーか⁇」


ふざけて“乾杯”なんて言ってからボク達は揃って甘酒に口を付けた。

トロリとした甘酒は、ゆっくりゆっくり喉を温めるように落ちていく。

お腹まで辿り着くと身体中がポカポカと温かくなる。

久しぶりに飲んだけど、甘みがちょうどよくて美味しい。

そう思っていると、リョウキチが首を傾げながら甘酒を見つめた。

リョウキチの言葉に、レイが同じように首を傾げながら尋ねる。


「ううん、むしろすごく美味しいよ。ただ、ぼくが家で飲む甘酒と違って甘くて美味しいからビックリしただけ」


アハハ、なんて軽く笑いながらそう言ったリョウキチ。


「ほら、この子お家柄的に小さい頃からお酒慣れちゃってるんだよね〜……、まぁ……本人無自覚だけど〜……」


コソコソと小さな声で言ったナルみんの言葉に、ボクとレイとカナデは“あー、だよねー”と声を揃える。

リョウキチ、君の知ってる甘酒は、たぶん“甘”なんて付くような優しいもんじゃないと思うよ……。


「リョーの顔でお酒めっちゃ強いとか激しくギャップだよね」


「リョウキチって顔と性格のわりに、ボク達より男らしいとこあるよなー」


美味しそうに甘酒を飲むリョウキチを見ながら、カナデが隣で小さな声で呟いた。

ボクもそれに同調するよう頷く。

リョウキチってホント、未だにいろんなところでギャップを見せてくれるから、ボク達も毎回驚くのと同時に、その男らしさに羨望の眼差しを向けているんだ。

本人無自覚っていうのが、これまたリョウキチがモテる要素だよねー。