もう十分なくらいに冷たいと感じていた冬の冷気は、止むどころかますますその冷たさを増していく。

きっとまだあと数ヶ月、この寒さは続くのだろう。

そんなことを考えてやまない12月31日の今日この頃。


「あったかーー」


大晦日である今日の夕食は蕎麦。

それを30分ほど前に食べ終えたボクは、今はコタツでぬくぬくと温まっている。


ボクの家は旅館のため、やはりこの時期はお客さんが後を絶たず、下からは楽しそうな笑い声が響いている。

本来この時期はあまりの忙しさにボクも女王……、じゃなくて、母さんに駆り出される。

けれど今はもう夜。

いつの間にかお酒が並ぶ宴会と化した場所も、ほんの少し落ち着いたため、ボクの手伝いは終了した。

そうしてボクはようやく夕食の蕎麦を口にし、特にすることもない今は、ダラダラとコタツに入って大晦日限定のテレビなんかを見たりしている。


コンコンッ。

そんなボクの部屋に聞こえたノック音。


「はーい」


返事をして扉のほうへと目を向ける。


「セナ」


「どうしたの??母さん」


入ってきたのは後藤家の女王である母さん。

何か用事でもあるのかと思い尋ねると。


「お客さんよ」


「お客さん??ボクに??」


こんな時間にボクにお客さんなんて……。

不思議に思いつつ、ボクは母さんに言われたとおり玄関へと向かった。




「よっ!」


ニカッと眩しい笑顔と鼻の赤みを携えてやってきたのはなんとレイだった。


「こんな時間にどうしたの??」


両手をポケットに入れて玄関に立つレイに驚いて、ボクは目を見開きながらそう尋ねた。

すると。


「行くぞっ!初詣!」


「……は??」


「つもうで!」


「うん……、今の“は”は初詣の“は”じゃないからね」


「行くぞっ!」


「あっ、スルーですか」


全く、レイは昔から思い立ったが吉日というところがあって、こうやって突然訪問してきたりするんだから……。


「準備するから5分待っとけ」


「おう!」


まあ、ボクも昔からそれに乗っかっちゃうんだけど。




5分後、バタバタしながらもなんとか準備をし終え、ボクはレイと一緒に外へ出た。

いつもは私服が有り得ないくらいダサいレイだけど、今日は上に羽織っているジャンパーのおかげで、普通にオシャレに見える。

きっとこのジャンパーの中は大変なことになっているんだろうけど、まあ見えないから良しとしよう。


「よーし、それじゃあ次りょーすけの家行くぞ、その次はナルの家で、最後にカナの家な」


「3人に連絡は??」


「してねーよ??」


うん、さすがレイ。

でも楽しそうだからもちろん止めはしないけど。