ピンク色の花弁がひらひら舞う。
それを見て楽しむことを花見と言い、昔から日本人は花見を愛していた。

だけど、高校生の俺達は所詮“花より団子”だろう。


「桜祭り??」


「うん!桜祭り!」


俺が持っていたチラシを見てそう尋ねてきた玲斗。
俺は玲斗へ笑顔で返事をし、他の3人へもチラシを見せた。


「そういえばもうそんな時期だったね」


「去年の桜祭りは途中から雨降ってきちゃって大変だったよね」


チラシを見てそう言った奏ちゃんは隣にいるりょうに「はい」とチラシを渡した。
りょうはチラシを見ながら苦笑いで去年の桜祭りの話をした。


「めっちゃバタバタしながら片付けてずぶ濡れで帰ったよな」


りょうの話へ便乗するようにそう言い、りょう同様苦笑いをしたセツ子。



桜祭りとは、この地域で春に行われる花見イベント。
20種類、計3000本の桜が植えられている場所で毎年この時期に1週間に渡り行われる。

俺達は毎年この桜祭りに参加しているのだけれど、去年は俺達が行った日だけ雨が大量に降ってきてしまい、俺達はずぶ濡れになってしまった。


「今年は1週間全部晴れだから去年のようにはならないよ」


「ナルめっちゃリサーチ済みだな」


俺が携帯で証拠とばかりに天気予報を見せると、感心したようにそう言った玲斗。


「たまには役に立つな」


「ごくまれにね」


セツ子とりょうは褒めてるの??
それともけなしてるの??


「それにしても、ナル今年はいつもより張り切ってるね」


奏ちゃんは「何で??」と理由を聞いてきた。


「よくぞ聞いてくれました!俺がこんなに張り切ってる理由はね」


俺へ耳を傾けて「うんうん」と頷きながら聞く4人。


「旬の食材が大量に手に入ったから、自由に使っていいって許可が下りたので、今年は去年よりも豪華な弁当が作れるからです!」


俺の家は定食屋をしている。
そのため旬の食材がたくさん集まってくる。

去年は店で出す分だけだったから使わせてもらえなかったけど、今年は去年の倍以上に手に入ったため、親からのお許しのもと、旬の食材達を使って料理を作ることができる。

せっかく作るなら、みんなが食べてくれる弁当がいい。
旬の食材達で料理ができることが嬉しくて、俺は今年、いつもより張り切っているのだ。

なんて考えていると、いつの間にか4人が桜祭りの計画と、弁当に入れてほしいものリストを作っている。


「弁当を楽しみにしてくれてるのは嬉しいんだけど、桜を楽しむ予定が2割くらいしか見えないんだけど」


そう言った俺の言葉は無視で着実に計画は立てられていった。