俺、長坂奏は、クリスマスに瑠美ちゃんのために用意したプレゼントを何とか本人に渡し終え、そろそろ俺も帰ろうかとしていた。
はずだったんだけど。
「俺瑠美のお兄ちゃんの緋織(ひおり)ねー、今はちょっと帰省中だけど、普段は響と同じ大学に通ってるから県外にいるんだよねー、ちなみに俺理学部」
俺の向かいに座りずっとしゃべり続けているこの人は一体……。
っていうか、今この状況こそ一体……。
思い返すと数分前……。
「お兄ちゃん!?」
「えっ??……」
瑠美ちゃんをちゃんと家まで送り届け、俺もそろそろ帰ろうかとしていたとき、後ろから突然聞き慣れない声がして、誰だろうと振り返ってみた。
すると瑠美ちゃんがその人を見てそう言った。
瑠美ちゃんにお兄さんがいるなんて知らなくて、一瞬驚いて動きが止まった。
「あっ……えっと、はじめまして長坂奏です」
でもすぐに挨拶しなきゃと思い軽くお辞儀をしながらそう言った。
瑠美ちゃんのお兄さんだ、きっと人見知りだろう。
それなら早く帰ったほうがいい。
そう思っていた俺の予想は簡単に裏切られた。
「あれ、もしかして長坂響の弟のカナ君??うわっまさかこんなところで会えるなんて!あっ俺響と同じ大学なんだよね、学部違うけど。っていうか寄って行ってよ、ね!」
「えっ!?あのっ……」
顔は兄妹というだけあって多少似ている。
けれど性格は全く似ていなくて、人見知りの瑠美ちゃんに反して、お兄さんのほうはよくしゃべる。
しかも俺の肩に手を回して、強制連行されてしまった。
まあ、こうして今に至るんだけどね。
今親いないんだよね、と言って瑠美ちゃんにお茶を入れに行かせた緋織さん。
そしてなぜか自分は俺の向かいのソファーに座ってしゃべり続けている。
「(瑠美ちゃん早く戻ってきて!!……)」
俺だけじゃ保ちそうにないんだけどっ。
「カナ君その前髪ジャマになんない??」
「えっ、別に……」
「そういえばカナ君って部活してる??」
「えっあっ、はい、部活は……」
「ねえねえカナ君ってさ……」
この人俺が答える隙も与えてくれないっ。
もしかしてこれ、嫌われてんの俺。
嫌われてるからこんななの??
「あの……緋織さん……」
「緋織さんなんて他人行儀に呼ばなくても」
「えっ??じゃあ何て呼べば……」
俺の質問に、緋織さんはしばらく考える素振りを見せてから言った。
「やっぱり“兄さん”かな」
真面目な顔でそんなことをぶちかましてきた緋織さん。
「やっぱり将来弟になるんだから、今から慣れてたほうがいいと思うんだよね」
将来……弟に……なる??……。
「えっ!?あっの!!違っ」
「ん??」
「俺別に瑠美ちゃんと付き合ってないですよっ」
この人完全に俺が彼氏だと勘違いしている。
「えっ!?うちの妹嫌い!?」
「いえ、そんなことないですけどっ」
「じゃあいいじゃん!」
何がいいのかはわからないけどこれ以上ツッコんで聞くのが面倒だ……。
「瑠美ね、昔から人見知りで照れ屋だったから男の子の友達なんていなかったんだよね。だからまさかこうして男の子の友達が来てくれるなんて思わなかった」
ため息を吐くのを堪えていると、ふと緋織さんがゆっくりとしゃべり始めた。
ってか、この人俺が彼氏とかじゃないって最初からわかっていたのか。
完全に俺弄られてただけ??……。
「……でも、家族にとっては無駄に男が寄り付かないほうがいいんじゃないんですか??」
瑠美ちゃんと似ている微笑み。
それに安心したのか、俺はついそんなことを尋ねていた。
「確かに変なのに寄り付かれたら困るけど……カナ君だったら大歓迎だよ」
「!!……何で、ですか??」
「だって、人見知りで照れ屋の瑠美が頑張って何かしようとするとき、いつもカナ君絡みなんだよね。瑠美は自覚ないけど」
これは弄られてるのか??……。
それとも……。
「お待たせしました。先輩に教えてもらった紅茶を買ったのでそれを入れてみました」
「ありがとう。前に話したの覚えていてくれたんだね」
頭をフル回転して緋織さんの言った意味を理解しようとしていたとき、ちょうど瑠美ちゃんが部屋に入ってきた。
受け取った紅茶は前に俺が話したもの。
まさか覚えていてくれているなんて思わなくて、何だか嬉しくなる。
「瑠美だけズルい!俺もカナ君と仲良しになりたい!ほらカナ君“兄さん”だよー!」
その言葉に口に含んだ紅茶を噴き出しそうになった俺。
瑠美ちゃんは何のことかわからなくてただ首を傾げている。
偶然出会った緋織さんは、瑠美ちゃんと似ている外見に反し、性格は全く似ていない。
嫌われてんのかとか思っていたけど、逆になぜかめちゃくちゃ好かれているみたい。
果てしなく俺の兄さんと同じく適わない感があるんだけど。
はずだったんだけど。
「俺瑠美のお兄ちゃんの緋織(ひおり)ねー、今はちょっと帰省中だけど、普段は響と同じ大学に通ってるから県外にいるんだよねー、ちなみに俺理学部」
俺の向かいに座りずっとしゃべり続けているこの人は一体……。
っていうか、今この状況こそ一体……。
思い返すと数分前……。
「お兄ちゃん!?」
「えっ??……」
瑠美ちゃんをちゃんと家まで送り届け、俺もそろそろ帰ろうかとしていたとき、後ろから突然聞き慣れない声がして、誰だろうと振り返ってみた。
すると瑠美ちゃんがその人を見てそう言った。
瑠美ちゃんにお兄さんがいるなんて知らなくて、一瞬驚いて動きが止まった。
「あっ……えっと、はじめまして長坂奏です」
でもすぐに挨拶しなきゃと思い軽くお辞儀をしながらそう言った。
瑠美ちゃんのお兄さんだ、きっと人見知りだろう。
それなら早く帰ったほうがいい。
そう思っていた俺の予想は簡単に裏切られた。
「あれ、もしかして長坂響の弟のカナ君??うわっまさかこんなところで会えるなんて!あっ俺響と同じ大学なんだよね、学部違うけど。っていうか寄って行ってよ、ね!」
「えっ!?あのっ……」
顔は兄妹というだけあって多少似ている。
けれど性格は全く似ていなくて、人見知りの瑠美ちゃんに反して、お兄さんのほうはよくしゃべる。
しかも俺の肩に手を回して、強制連行されてしまった。
まあ、こうして今に至るんだけどね。
今親いないんだよね、と言って瑠美ちゃんにお茶を入れに行かせた緋織さん。
そしてなぜか自分は俺の向かいのソファーに座ってしゃべり続けている。
「(瑠美ちゃん早く戻ってきて!!……)」
俺だけじゃ保ちそうにないんだけどっ。
「カナ君その前髪ジャマになんない??」
「えっ、別に……」
「そういえばカナ君って部活してる??」
「えっあっ、はい、部活は……」
「ねえねえカナ君ってさ……」
この人俺が答える隙も与えてくれないっ。
もしかしてこれ、嫌われてんの俺。
嫌われてるからこんななの??
「あの……緋織さん……」
「緋織さんなんて他人行儀に呼ばなくても」
「えっ??じゃあ何て呼べば……」
俺の質問に、緋織さんはしばらく考える素振りを見せてから言った。
「やっぱり“兄さん”かな」
真面目な顔でそんなことをぶちかましてきた緋織さん。
「やっぱり将来弟になるんだから、今から慣れてたほうがいいと思うんだよね」
将来……弟に……なる??……。
「えっ!?あっの!!違っ」
「ん??」
「俺別に瑠美ちゃんと付き合ってないですよっ」
この人完全に俺が彼氏だと勘違いしている。
「えっ!?うちの妹嫌い!?」
「いえ、そんなことないですけどっ」
「じゃあいいじゃん!」
何がいいのかはわからないけどこれ以上ツッコんで聞くのが面倒だ……。
「瑠美ね、昔から人見知りで照れ屋だったから男の子の友達なんていなかったんだよね。だからまさかこうして男の子の友達が来てくれるなんて思わなかった」
ため息を吐くのを堪えていると、ふと緋織さんがゆっくりとしゃべり始めた。
ってか、この人俺が彼氏とかじゃないって最初からわかっていたのか。
完全に俺弄られてただけ??……。
「……でも、家族にとっては無駄に男が寄り付かないほうがいいんじゃないんですか??」
瑠美ちゃんと似ている微笑み。
それに安心したのか、俺はついそんなことを尋ねていた。
「確かに変なのに寄り付かれたら困るけど……カナ君だったら大歓迎だよ」
「!!……何で、ですか??」
「だって、人見知りで照れ屋の瑠美が頑張って何かしようとするとき、いつもカナ君絡みなんだよね。瑠美は自覚ないけど」
これは弄られてるのか??……。
それとも……。
「お待たせしました。先輩に教えてもらった紅茶を買ったのでそれを入れてみました」
「ありがとう。前に話したの覚えていてくれたんだね」
頭をフル回転して緋織さんの言った意味を理解しようとしていたとき、ちょうど瑠美ちゃんが部屋に入ってきた。
受け取った紅茶は前に俺が話したもの。
まさか覚えていてくれているなんて思わなくて、何だか嬉しくなる。
「瑠美だけズルい!俺もカナ君と仲良しになりたい!ほらカナ君“兄さん”だよー!」
その言葉に口に含んだ紅茶を噴き出しそうになった俺。
瑠美ちゃんは何のことかわからなくてただ首を傾げている。
偶然出会った緋織さんは、瑠美ちゃんと似ている外見に反し、性格は全く似ていない。
嫌われてんのかとか思っていたけど、逆になぜかめちゃくちゃ好かれているみたい。
果てしなく俺の兄さんと同じく適わない感があるんだけど。
