ボク、後藤瀬那は、クリスマスプレゼントをちゃんとトナミちゃんに渡すことができて、安心して家に帰ろうかとしていた。

はずだった。


「何でそんなに髪大好きなのかな……」


ボクの髪を間近で見つめる4つの目。

この状況は一体全体何なんだろうか……。

思い返すと数分前。




「チハヤ!チヒロ!」


「はい??」


ボクの家である旅館からトナミちゃんを家まで送り届けてから、少しトナミちゃんと会話を交わした。

そしてそろそろボクも家に帰ろうかとしていたとき、突然どこからともなく小学生くらいの男の子と女の子が現れた。

どうやらこの2人はトナミちゃんの妹と弟らしい。

カバンを振り回しながら現れた男の子の方が千早(ちはや)君。

その後ろを追いかけてくるように走ってきた女の子の方が千広(ちひろ)ちゃん。

そして2人は小学4年生の二卵生の双子。

ちなみにチハヤ君がお兄ちゃんらしい。


「うおっ!?なんか知らんがキラキラしてる!!」


「こういうの金髪って言うんだよね!!」


「パツキンかよー、不良じゃん!!」


「ハヤ、それ本人に言ったらダメなやつ」


なんて元気な子達だ。

そして気付けば今に至る……ん??何で??

いや待って、双子に翻弄されている間にボクに何があった??

全然わかんないんだけどっ!?


「(わかるのは、なぜか今双子に髪をただひたすら見つめられているだけ……か)」


確かトナミちゃんが“お茶入れてきます”って言っていたのは覚えているんだけど、それより前の記憶が飛んでる。

わんぱく小学生恐るべし。

レイの弟の太陽もいいだけわんぱくだけど、それを何倍も上回ってるよ。


「えっと……ボク後藤瀬那、よろしくね。そんなに気になるなら触ってもいいよ??」


とりあえずボクの自己紹介がまだだったことに気付いて軽く自己紹介をする。

そしてあまりに見つめてくるものだから、触ってもいいよと言ってみる。


「マジか瀬那!!」


「わーい!ありがとう!」


「痛い痛い痛いっ!!」


この際呼び捨てなのは気にしない。

それより思いっ切り引っ張られる髪が痛い。

チヒロちゃんの方は髪をとくようにしてくれているけど、チハヤ君は完全に引っ張っている。


「(そう言えば前に太陽がヤバい小学生がいるとか言ってたな……)」


太陽、どうやらボクもそのヤバい小学生とやらに出会ってしまったみたいだよ。


「瀬那、仕方ないから俺の子分にしてやる!!ありがたく思え!!」


「ハヤ、失礼だよ。瀬那君、お友達になろう、ね??」


チハヤ君は思い切った行動や言動をするときのトナミちゃんをもっと酷くした感じ。

チヒロちゃんは普段のトナミちゃんをもっとわんぱくにした感じ。

似ているけど、やっぱり小学生の方がいろいろ上回っている。


「チハヤ、チヒロ、迷惑かけちゃダメだよ」


ボクだけじゃ対処しきれない。

そう思っていたとき、ちょうどトナミちゃんがお茶を運んで部屋に入ってきた。

今はトナミちゃんが女神に見える。


「姉ちゃん!瀬那俺の子分!」


「お姉ちゃん!瀬那君とお友達になった!」


「2人とも、先輩に失礼でしょ??」


双子に注意してボクに困ったように笑いながら頭を下げるトナミちゃん。


「お姉ちゃんだなぁ……」


普段見れない一面。

何だかちょっと得した気分。

ボクは双子に言って聞かせているトナミちゃんを見て、聞こえないように小さな声でそう呟いた。

案の定トナミちゃんにも双子にも聞こえていないみたい。

しかも、注意するトナミちゃんから逃げる双子をトナミちゃんが捕まえようとして、いつの間にか3人は仲良く追いかけっこを始めてしまった。


「瀬那も入れてやるよ!」


「瀬那君も一緒にやろ!」


「うわっ!?ちょっと!!」


無理矢理両手を引っ張られ、ボクも追いかけっこに強制参加。

これトナミちゃんの親いたら怒られるよね、今ちょうど外出中みたいでよかった。


偶然出会ったチハヤ君とチヒロちゃんは、わんぱくすぎて翻弄させられてしまうけど、こうして一緒にいると、まるでボクも兄弟の仲間入りをしたみたいで楽しくなる。

ボクも下に兄弟欲しいな。