俺、岡本玲斗は、クリスマスのプレゼントを何とか伊吹に渡すことができ、そろそろ帰ろうかとしていた。

はずだったんだが。


「玲斗兄ちゃんこれ見て」


「玲斗兄ちゃんこれも見て」


目の前に手作りらしきリースを突きつけてくる同じ顔の小学生二人。

この状況は一体何なんだろうな。

思い返すと数分前。




「昴!?充!?」


「ん??」


伊吹を家まで送り届け、そろそろ俺も帰ろうかとしていたとき、突然2つの聞いたことのある声が玄関から聞こえた。

声のしたほうに目線を向けると、伊吹は驚いたような声を出す。

伊吹によって呼ばれた名前により、俺は思い出した。

こいつ達は伊吹の弟達であることを。


「玲斗兄ちゃんあがってよ!」


「見せたいものがあるからあがってよ!」


双子の昴(すばる)と充(みつる)は同じ顔をパッと明るくして、俺の手を引っ張り無理矢理家の中に入れた。

そして今に至る。


「2人とも上手いな、太陽とは大違い」


こいつ達は俺の弟の太陽と同い年で、同じクラスの友達同士。

だから今見せてくれている、小学校で作ったらしいリースは、太陽が作ったものが家にある。


「太陽も上手かったよ」


「なんか男気MAXって感じでかっこよかった」


「あはは、ありがとな。そう伝えとくよ」


こいつ達に会うのはこれで2回目だけど、太陽と同い年ということもあり、まるで弟のようで接しやすい。

すぐに打ち解けられて、こうして俺に懐いてくれてんのは、姉ちゃんである伊吹のおかげかな??


「そういや伊吹は??」


ふと、さっきから伊吹の姿が見当たらないことに気付き、辺りをキョロキョロ見渡す。


「姉ちゃんお茶入れに行ったよ」


「まだ親帰ってないから」


どうやら仕事でまだ帰宅していない両親の代わりに、伊吹がいろいろ用意してくれているらしい。

別にそんなのよかったのに。


「「あのさ……」」


そんなことを考えていると、突然2つの声が重なりながら聞こえた。


「……充言ってよ」


「……昴のほうが兄ちゃんじゃん」


「だったらそこは弟の充が」


「いや、兄ちゃんの昴が」


どうしたのかと首を傾げる俺に何か言い辛いことでもあるのか、2人はお前が言えと押し付け合い。


「じゃあもうせーの、だからな」


「わかった」


どうやら意見はまとまったようで、意を決したように“せーの”と小声で呟いた。

そして。


「「玲斗兄ちゃんは姉ちゃんと結婚しますか??」」


「……は??」


ちょっと待て。

こいつ達今何言った??

いやいや、落ち着け。

たぶん俺の聞き間違いだから。


「えーっと……悪いけどもう一回言ってくれるか??」


「「玲斗兄ちゃんは姉ちゃんと結婚しますか??」」


「………」


どうやら聞き間違いではなかったらしい。


「……何で突然そんなこと言うんだ??」


返事をどう返すかより、俺はこいつ達が何でそんな質問をしてきたかのほうが気になった。


「だって姉ちゃんと玲斗兄ちゃんが結婚したら」


「玲斗兄ちゃんは俺達の兄ちゃんになるから」


「えっ??」


もしかして、俺が兄ちゃんだったら嬉しいってことか??

ヤバいな、こんな懐いてくれてるなんて思わなくて、正直めっちゃ嬉しい。


「昴と充の兄ちゃんになれるなら俺も嬉しいよ」


「「じゃあっ」」


「でも結婚っていうのはな、お互い好き合ってないと出来ないんだぞ??俺がよくても伊吹が嫌だったらダメってこと」


後半は冗談を交えて“俺はいいんだけどなー”みたいな感じで言ってやる。

小学生の扱いなんて完璧だから、どう言ってやるのが一番いいかなんてわかるんだよ。


「お待たせしました」


「別にそんなのよかったのに」


ちょうど話が終わったところで伊吹がお茶を持って部屋に入ってきた。

わざわざごめんな、ありがとう。

そう言ってお茶を受け取り口に含む。


「姉ちゃんもしたいよね??」


「玲斗兄ちゃんと結婚」


「えっ!?」


「っ!!?ゲホッゲホッ!!」


まさかの爆弾投下に飲み込んだお茶が変なところに入って咽せた。

伊吹は慌てて俺の背中をさすってくれながら何度も謝罪してくる。


「ゲホッゲホッ!!(この双子っ……)」


爆弾投下した張本人達はケロリとした顔。

咽せながら双子を睨んでみるが効果はゼロ。


突然再開した昴と充は、小学生ならではの予測不能な行動を突然してしまうらしい。

俺小学生の扱い完璧なんかじゃなかった。