ぼく、荒川涼桔は、クリスマスのプレゼントを小早川さんに無事渡し終え、そろそろ帰ろうかとしていた。
はずだったんだけど……。
「えっと……」
優しく微笑みかけてくれながら、ぼくの目の前に座る女性が、なぜかぼくをガン見しているこの状況は一体何なのでしょうか??……。
思い返せば数分前。
「お母さん!?」
「えっ??」
小早川さんの家の前で会ったのは、買い物帰りらしき感じの女性。
「詩音、お友達??」
「あっえっと、先輩で……」
「あっ、はじめましてっ、荒川涼桔です」
どうやら小早川さんのお母さんらしく、慌てて挨拶をしたぼくに、優しい笑みを浮かべた。
「わざわざ送ってくれたの??せっかくだからちょっと寄っていかない??」
笑顔をくれたことに安心して、そろそろ帰ろうかと思っていると、突然そんな申し出を受けた。
「えっあっいやっ、ぼくはっ……」
「さあさあ、どうぞ」
こうしてぼくは断る余裕も与えてもらえずに現在に至る。
小早川さんにお茶を入れに行かせた小早川さんのお母さんは、なぜかぼくを座らせたソファーの真向かいに座ってぼくをガン見している。
優しく微笑みかけてくれているため、ぼくも同じように微笑み返しているけれど、一言も会話を交わさずにこの状況。
「(誰か助けて!!)」
内心逃げ出したい気持ちでいっぱい。
「あの……」
「詩音は」
「??」
ここはもうぼくから声をかけるしかない。
そう思って口を開いた。
けれどそれを遮るように、小早川さんのお母さんが口を開いた。
「詩音はね、昔から大人しい子だったの」
「??……はい」
「人見知りとか、そういうのではなかったんだけどね、どうも人と話すよりも1人で本を読んでいるほうが好きだったみたいでね」
突然始まった小早川さんについての話。
ぼくはどうすることもできなくて、その話に耳を傾けることにした。
「中学生になって仲良しの友達が出来るまでは、自分から自分の話をしてくれるような子じゃなかったの」
話を聞いているうちに、ぼくの頭の中には小早川さんの幼少期の姿が浮かんだ。
ワガママなんて言わなくて、周りに気を遣えて、1人で何でも出来てしまう、そんな大人しくて賢い子。
自分の話をするよりも、両親の話を聞いてあげられる優しい子。
「私達親はね、ずっと詩音が自分の話をしてくれるのを待っていたの。中学生になって少し話してくれるようにはなったけど、もっともっとって思っていたわ。でも詩音は話してくれない」
「………」
「そう思っていたんだけどね」
嬉しそうにふふっと笑う小早川さんのお母さん。
どういうことかとぼくは首を傾げる。
「高校生になって少ししてから、急にいろんなことを話してくれるようになったの、それもとても楽しそうに」
「どうしてですか??」
ずっと自分のことを話したりしなかった小早川さん。
それなのに、彼女が変わった理由は??
何が彼女を変えたの??
ぼくはその理由が知りたくて、そう尋ねた。
「自覚なし??」
「えっ??」
クスクス笑う小早川さんのお母さん。
ぼくは意味がわからなくてただ首を傾げるばかり。
「話はずっと聴いていたわ、だから会えて嬉しいわよ、涼桔君」
「!!」
嘘でしょ??
まさかそんなことが……。
それじゃあまるで、小早川さんを変えたのはぼくみたいに……。
「お待たせしました。……荒川先輩??大丈夫ですか??」
「えっ!?あっ、大丈夫だよ」
思考が停止してしまっていたぼくは、いつの間に小早川さんがお茶を運んでくれたのか気付かなかったため、あわあわしながら返事をした。
「変わったわね、詩音」
未だに戸惑うぼく。
そしてぼくに向けて不思議そうな顔をする小早川さん。
そんなぼく達を見て、小早川さんのお母さんは優しく笑顔を浮かべながらそう言った。
ただし、目線はぼくに向けながら。
「(それじゃあ本当に勘違いしそうになりますって!!)」
ぼくと出会って小早川さんが変わったとしたら、それは本当に光栄なこと。
だけどそれが勘違いなら、自意識過剰みたいで恥ずかしい。
そんなつもりは無いんだろうけど、弄られているようで、ぼくはどうにも居たたまれない。
突然遭遇した小早川さんのお母さんは、小早川さん同様に、天然で人を赤面させてしまうらしい。
ああもう、本当に居たたまれない。
はずだったんだけど……。
「えっと……」
優しく微笑みかけてくれながら、ぼくの目の前に座る女性が、なぜかぼくをガン見しているこの状況は一体何なのでしょうか??……。
思い返せば数分前。
「お母さん!?」
「えっ??」
小早川さんの家の前で会ったのは、買い物帰りらしき感じの女性。
「詩音、お友達??」
「あっえっと、先輩で……」
「あっ、はじめましてっ、荒川涼桔です」
どうやら小早川さんのお母さんらしく、慌てて挨拶をしたぼくに、優しい笑みを浮かべた。
「わざわざ送ってくれたの??せっかくだからちょっと寄っていかない??」
笑顔をくれたことに安心して、そろそろ帰ろうかと思っていると、突然そんな申し出を受けた。
「えっあっいやっ、ぼくはっ……」
「さあさあ、どうぞ」
こうしてぼくは断る余裕も与えてもらえずに現在に至る。
小早川さんにお茶を入れに行かせた小早川さんのお母さんは、なぜかぼくを座らせたソファーの真向かいに座ってぼくをガン見している。
優しく微笑みかけてくれているため、ぼくも同じように微笑み返しているけれど、一言も会話を交わさずにこの状況。
「(誰か助けて!!)」
内心逃げ出したい気持ちでいっぱい。
「あの……」
「詩音は」
「??」
ここはもうぼくから声をかけるしかない。
そう思って口を開いた。
けれどそれを遮るように、小早川さんのお母さんが口を開いた。
「詩音はね、昔から大人しい子だったの」
「??……はい」
「人見知りとか、そういうのではなかったんだけどね、どうも人と話すよりも1人で本を読んでいるほうが好きだったみたいでね」
突然始まった小早川さんについての話。
ぼくはどうすることもできなくて、その話に耳を傾けることにした。
「中学生になって仲良しの友達が出来るまでは、自分から自分の話をしてくれるような子じゃなかったの」
話を聞いているうちに、ぼくの頭の中には小早川さんの幼少期の姿が浮かんだ。
ワガママなんて言わなくて、周りに気を遣えて、1人で何でも出来てしまう、そんな大人しくて賢い子。
自分の話をするよりも、両親の話を聞いてあげられる優しい子。
「私達親はね、ずっと詩音が自分の話をしてくれるのを待っていたの。中学生になって少し話してくれるようにはなったけど、もっともっとって思っていたわ。でも詩音は話してくれない」
「………」
「そう思っていたんだけどね」
嬉しそうにふふっと笑う小早川さんのお母さん。
どういうことかとぼくは首を傾げる。
「高校生になって少ししてから、急にいろんなことを話してくれるようになったの、それもとても楽しそうに」
「どうしてですか??」
ずっと自分のことを話したりしなかった小早川さん。
それなのに、彼女が変わった理由は??
何が彼女を変えたの??
ぼくはその理由が知りたくて、そう尋ねた。
「自覚なし??」
「えっ??」
クスクス笑う小早川さんのお母さん。
ぼくは意味がわからなくてただ首を傾げるばかり。
「話はずっと聴いていたわ、だから会えて嬉しいわよ、涼桔君」
「!!」
嘘でしょ??
まさかそんなことが……。
それじゃあまるで、小早川さんを変えたのはぼくみたいに……。
「お待たせしました。……荒川先輩??大丈夫ですか??」
「えっ!?あっ、大丈夫だよ」
思考が停止してしまっていたぼくは、いつの間に小早川さんがお茶を運んでくれたのか気付かなかったため、あわあわしながら返事をした。
「変わったわね、詩音」
未だに戸惑うぼく。
そしてぼくに向けて不思議そうな顔をする小早川さん。
そんなぼく達を見て、小早川さんのお母さんは優しく笑顔を浮かべながらそう言った。
ただし、目線はぼくに向けながら。
「(それじゃあ本当に勘違いしそうになりますって!!)」
ぼくと出会って小早川さんが変わったとしたら、それは本当に光栄なこと。
だけどそれが勘違いなら、自意識過剰みたいで恥ずかしい。
そんなつもりは無いんだろうけど、弄られているようで、ぼくはどうにも居たたまれない。
突然遭遇した小早川さんのお母さんは、小早川さん同様に、天然で人を赤面させてしまうらしい。
ああもう、本当に居たたまれない。