伊吹を家に送るさながら、俺はそっとポケットに手を入れる。

まんまとナルに乗せられてわざわざ今日持ってきたプレゼント。

伊吹達が来ることなんてもちろん知らなかったため、本当にナルにはまんまとやられたよな。

さて、アイツ達はみんなちゃんと渡せたかな。

渡すとしたらどんな風に渡したんだろうか。

何て言って渡したんだろうか。

伊吹の家が少しずつ近付くたび、俺はこのポケットに隠されたものをいつ渡そうかと悩んでいた。


「紬ちゃんは……」


「えっ??」


「紬ちゃんは、やっぱりサンタさん、信じてますよね??」


1人でいろいろ考えていると、突然伊吹がそんな話を振ってきた。


「ああ、もう何日も前からサンタさんサンタさん言ってるよ」


「ふふっ、可愛いですね。あたしの弟達も昔はそうだったのになぁ」


「確かに、小学生はさすがに信じてるやつ少なくなってくるもんな。太陽ももうサンタ信じてねーし」


なんて、下の兄弟達のサンタ事情について話していると、ふと思い付いた質問を伊吹にぶつけてみる。


「伊吹はいつまで信じてた??」


その質問に、伊吹は空を見上げて考える素振りを見せた。


「弟達が産まれた年である小学3年生くらいまでですかね。弟達が産まれてからは逆にあたしがプレゼントをあげる側になってて、サンタさんどころか誰かにクリスマスプレゼントをもらうなんて結構前から無くなってますね」


その言葉を聴き、俺はポケットに入れていた手に力を込める。


「じゃあさ、サンタからのプレゼント、やるよ」


「えっ??……」


言葉の意味を尋ねられるよりも先にプレゼントを差し出す。

さっきまでタイミングとかいろいろ考えていたのが嘘みたいに。


「どうして……あたしに??……」


戸惑う伊吹。

そりゃそうだよな、クリスマスプレゼント久しぶりだもんな。


「よい子のところにはサンタが来るんだよ」


優しい優しい姉ちゃんの伊吹。

だけどクリスマスはお前だってプレゼントをもらう立場だ。

サンタが来てくれねーなら俺がお前にあげるから。

そう思って選んだプレゼントは、トナカイが引くソリに乗って夜空を飛ぶサンタが入っているスノードーム。

中を開けて、偽サンタの俺からのプレゼントに最高の笑顔をくれるまで後わずか。








「小早川さんが気に入ってくれてよかった」


「あら??詩音??」


「お母さん!?」


「えっ??」




「ボクのセリフ、なんかちょっと寒かったね」


「あれー??」


「お姉ちゃん??」


「チハヤ!チヒロ!」


「はい??」




「そんなに喜んでくれて俺まで嬉しいよ」


「瑠美??……」


「お兄ちゃん!?」


「えっ??……」




「もう~マイスウィートハニーは本当に可愛いな~」


「姉ちゃんが誰の何だって??」


「棗!」


「はっ??」




「どうだ、久しぶりのプレゼントは」


「姉ちゃん発見!」


「おっ??玲斗兄ちゃんもいる!」


「昴!?充!?」


「ん??」




家のすぐ前。

プレゼントも渡せて最高のクリスマスになり、そろそろ俺も帰ろうかと思って、それじゃあまた、と手を振る。

はずだった。

しかしそれは突然かけられた声によって阻まれた……。

しかも俺だけじゃなく、liberty全員がこの後、この声の主によってそれぞれ大変なことになるなんて、誰も予想していなかった。