「買っちまったもんは仕方ない。割り切って早くパーティー始めようぜ??」


今更グダグダ言うのは男らしくねー。

そう思った俺は渋る3人に笑いかけた。

すると瀬那とりょーすけも同じように「仕方ないか」という表情をして笑った。


「はあーー……」


この際カナの最大限に嫌がっているのがわかるため息は聞かなかったことにしよう。




「それじゃあ、今度はマジで……」


「失礼します」


コスプレもちゃんとした。

さあ、今度はマジでパーティーを始めよう。

そう思い言葉を発した瞬間、今度は旅館の従業員の人にそれは遮られた。

扉の向こうから聞こえた声に瀬那が「どうぞ」と返事をする。


「お楽しみのところすみません、お客様です」


ゆっくりと扉を開けて中に入ってきた従業員の人はそれだけ伝えるとまた扉を閉めて去っていった。


「お客さん??誰か呼んでたの??」


「いや、ボクは知らないけど……」


お客様だと言われてりょーすけが不思議そうに首を傾げながら瀬那に尋ねた。

すると瀬那は知らないと首を左右に振る。


「瀬那が知らないのに俺達に客??」


「何かの間違いなんじゃねーのか??」


もちろんりょーすけと瀬那だけでなくカナと俺も知らない。

そのため俺達も不思議に思って首を傾げた。


「あっ、やっと来たかな~」


けれどナルだけは違った。

心当たりがあるのか、ミニスカから出ている長い足でスキップをするように部屋を後にした。


「何でかなー、すげー嫌な予感……」


こういうときナルが絡んでいるものは大抵何かしら俺達が恥をかくこと。

それを理解しているため、俺の言葉に3人も深く頷いた。




「さあさあ入って~!」


しばらくするといくつもの足音とともにナルが帰ってきた。

俺達に向かってニヤニヤ笑ったあと扉を開けたまま誰かにそう声をかけた。

いったい誰を連れてきたんだ??

そう思って扉の方に視線を向けると……。


「こんにちは、岡本先輩はサンタさんなんですね、とっても似合っています」


「えっ……伊吹!?……」


そこには伊吹を含めたいつもの女の子達がいた。


「後藤先輩モミの木なんですね。髪がキラキラお星様!」


「あーいやー、これは……」


「とっても似合ってます!」


「ありがとう、でもこの衣装ではちょっと複雑」


トタトタと瀬那に走り寄った砺波ちゃんの言葉に瀬那はものすごく複雑そうな顔で笑っている。


「荒川先輩はベージュ色のトナカイなんですね」


「まさか小早川さんが来るとは思わなかったから、こんな格好なんて恥ずかしいね」


「そんなことないですよ、私トナカイ好きですから」


「そっか……それならまあいいかな」


微笑んだ小早川ちゃんの言葉に、りょーすけは少し照れたように笑った。


「長坂先輩がブラウンのトナカイの着ぐるみなんて珍しいですね」


「これ俺の趣味とかじゃないからね、ジャンケンで負けたから仕方なく着てるだけだから」


「でもとても可愛らしいですよ」


「………」


純真な神崎ちゃんの言葉に、カナは嫌だとは言えず、超絶下手くそな苦笑いを浮かべている。


「ミニスカサンタとか……」


「その最後の間何かな~??似合うって言いたいの~??」


「いえ、ただこの人正気か??と思っただけです」


「そんな真顔で俺の心を的確に痛めつけるなんて蛍ちゃんしかできないよ」


表情を変えることなく言い放った小鳥遊ちゃんにナルは落ち込んだように肩を落とした。


「突然お邪魔する形になってすみません」


それぞれ話し出した4組を少し離れたところから見ていると、隣から伊吹の声が聞こえた。


「ああ、いや、大丈夫だ、ただちょっと驚いた。まさか伊吹達が来るとは思わなかったから」


そちらに向くと、申しわけなさそうな顔をする伊吹が目に入り、俺は少し慌ててそう言った。


「松岡先輩がサプライズをしようって提案されたようで……」


話を聞くと、どうやらナルが小鳥遊ちゃんに伊吹達も含めて5人でクリスマスの日にここに来いと言ったらしい。

俺達を驚かせるため。


「ナルのやつ……マジで俺達まんまと引っかかったな」


全く気付かなかった自分に、俺は軽くため息をついた。